乳酸菌だけでは不十分? 高齢者が大腸のために取るべき菌とは
形状の違い
三つ目は形状の違いです。電子顕微鏡で1万倍ほどに拡大すると、ビフィズス菌はY字状に枝分かれしているものが多く、乳酸菌は棒状や球状なので形状が大きく異なります。
ビフィズス菌は1899年にフランスのアンリ・ティシエという研究者によって発見されました。現在では50~90種類が知られていて、菌株によってさまざまな健康への効能があります。ただし、乳酸菌に比べると免疫関連の効果は少ない傾向にあると思います。
乳酸菌は酸素が比較的多く存在する小腸で働きます。小腸には体に悪いものが入ってきた時に対処できるよう、異物を取り込んで分析するパイエル板やM細胞があります。しかし、ビフィズス菌がすむ大腸にはこれらの免疫情報収集器官はありません。つまり、大腸では小腸のように直接、菌体を吸収して免疫担当細胞を刺激することはないのです。ビフィズス菌を含んだ製品でアレルギーを抑えるものがありますが、それは、小腸パイエル板で菌が吸収されることで機能性を発揮するものと考えられます。
70代で20代の1割
従って、ビフィズス菌が発揮する効能は(1)整腸作用(排便回数を増やす、便臭を抑える)、(2)大腸がん抑制作用(大腸がんの原因となる有害菌を酢酸で殺菌する)が主となります。小腸でいろいろな働きをする乳酸菌、それを含んだヨーグルトや飲料などと比べると華々しさに欠ける印象があるかもしれませんが、酸素が少なく、乳酸菌が生きられない大腸の健康を守る菌はビフィズス菌以外にはないと言っても過言ではないので、腸の健康には極めて重要な菌といえます。
また、高齢になるとビフィズス菌などの善玉菌が減少することも示されています。ビフィズス菌でいえば、20代の時と比べて70代では1割程度にまで減ってしまうとされています。誰でも老化が進むとそれだけ腸管の蠕動(ぜんどう)運動が弱まり、胃酸、胆汁酸の分泌が少なくなっていきます。そうすると、腸内に悪玉菌などが増殖しやすくなり、悪玉菌の産生する悪い酸や悪い物質により、腸管の細胞が傷ついていく。腸内環境を守る善玉菌さえも減少しているところに老化に伴って腸内の環境が悪くなっているわけですから、高齢者は二重に腸内のリスクを抱えていることになります。ビフィズス菌を外から食品の形態で取り込むことは特に重要になってくる時期といえるのではないでしょうか。
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