スウェーデン「サーブ」とプーチンの意外な関係 どうすればロシア軍を撃退できるかという思想
潜水艦も建造
こうした独特の設計思想が、他国の空軍からも評価されてきた。
「サーブが開発・生産する軍用機は性能が高く、その割にアメリカの軍用機より安価です。おまけにドラケンなら、1機で戦闘機と攻撃機の2機を購入したことになり、整備もできるだけ簡単に行えるよう配慮されています。“コストパフォーマンス”が極めて高く、発展途上国で人気が出るのは、ある意味で当然でしょう。ヨーロッパでは最も貧しい国の一つであるウクライナも、サーブが現在開発販売している最新のマルチロール機『サーブ39 グリペン』の購入を検討していたと言われています」(同・軍事ジャーナリスト)
更にアメリカの軍用機は性能が高い分、機密になっている部分も少なくない。故障した場合、本国のメーカーでしか修理ができないというケースもある。
「サーブの場合、機密に抵触するようなことはほとんどありません。それどころか他国の軍隊が『この部品は自国生産のものを使いたい』などと許可を求めると、簡単にOKします。ネジ1本でも変えられないアメリカ製の兵器とは異なり、現地で効率的な運用が可能になるよう配慮してくれるのです」(同・軍事ジャーナリスト)
サーブの建造する潜水艦も、独特な設計思想が高い評価を受けているという。こちらのキーワードは「原潜」だ。
対戦車ミサイルの威力
「サーブの潜水艦はディーゼル機関ですが、『非大気依存推進』という特殊技術では世界トップクラスの能力を誇っています。つまり、空気がなくとも長期間の潜水が可能なのです。費用や国是の観点から原子力潜水艦には手が出せないという国は、サーブの潜水艦を購入しています。実は日本の海上自衛隊もそうで、サーブの非大気依存推進技術を購入し、日本が作る潜水艦に使用しています」(同・軍事ジャーナリスト)
世界各国の軍隊から信用を得ているサーブの兵器でも、特に人気が高いのがミサイルだ。
「自国に攻め込んできたロシアの戦車を撃退するため、スウェーデン軍はロケット兵器の開発にも力を入れてきました。軽いため兵士の携行が楽で、反動を少なくして射撃を簡単にするというのがテーマでした」(同・軍事ジャーナリスト)
こうしたニーズから「カールグスタフ」という無反動砲や「AT-4」という携行式対戦車弾が開発されてきた。これらは現在、サーブの子会社が生産を行っている。
「今回のウクライナ侵攻で、ロシア軍の戦車に大きな打撃を与えているのが『NLAW』という携行式の対戦車ミサイルです。サーブがイギリスの兵器メーカーと共同で開発しました。アメリカの携行式対戦車ミサイル『ジャベリン』と同じ種類の兵器ですが、もちろんNLAWは安価なところが最大のセールスポイントです」(同・軍事ジャーナリスト)
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