すず派? アリス派? なぜ私たちは広瀬姉妹に一言いいたくなってしまうのか 正反対に見えても共通するイメージ戦略

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

「男ウケ」のすず、「女ウケ」のアリス……お茶の間だけでなく制作者でも分かれる姉妹の違い

 アリスさんの躍進は、同性人気を獲得したことも大きいだろう。画面で見る姿が本人そのものと同一視するのはおかしいが、彼女の場合は演じる役柄イメージに重なるといわれている。明るく気さくでしっかり者、そういう役が続いていた。一方のすずさんは、同性人気より男性からの支持が圧倒的だったのが印象深い。カップ焼きそばのCMでは卑猥に聞こえるセリフで炎上していたが、男性にチヤホヤされるのを承知で無神経に振る舞う女性、というイメージも同性の反感を買った理由ではないだろうか。

 女性ウケのアリス、男性ウケのすず。乱暴に言えばそういうことだ。でも面白いことに、それは制作側にも表れている。アリスさんの当たり役は女性脚本家が多く、すずさんを抜擢するのは男性監督ばかりだ。

 アリスさんの出世作といわれる朝ドラ「わろてんか」、主演を務めた「ハラスメントゲーム」「知ってるワイフ」は女性脚本家による作品だ。今期の「恋なんて、本気でやってどうするの?」も浅野妙子さんが脚本を担当している。とにかく女性脚本家との相性がいいのである。

 一方、すずさんのヒット作は男性監督が目立つ。ドラマでは坂本裕二脚本・水田伸生演出の「anone」。映画では是枝裕和監督の「三度目の殺人」、「海街diary」。李相日監督の「怒り」、そして今年公開の「流浪の月」。CMで見せるハツラツとした姿ではなく、家庭事情が複雑だったり、どこか憂いをひそめた役どころが多い。

 明るくて一生懸命で、まっすぐな役が得意なアリスさん。ちょっとミステリアスで陰のある美少女役が得意なすずさん。どちらがいいとも正しいともいえない。映画とドラマのどっちが上だとか、主演の数でも測れない。重要なのはお茶の間も制作者も、広瀬姉妹には人一倍肩入れしたくなる、抗い難い魅力があるということなのだろう。

次ページ:ジブリヒロイン的なすず、ディズニーヒロイン的なアリス……真逆のイメージで王道ヒロインを邁進する姉妹の「健気さ」売りという共通点

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。