リスクを伴う米国によるウクライナへの軍事支援 自国の極右主義者の手に渡る可能性も

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「ネオナチ問題」に目をつぶり…

 現在の主戦場となっているウクライナ東部のマリウポリでロシア軍と激戦を繰り広げているのはアゾフ連隊だ。

 日本でも有名になったアゾフ連隊は、マリウポリを拠点とする準軍事組織として2014年2月に発足し、同年11月に内務省直轄の軍事組織(国家親衛隊)となった。隊員の数は1000人程度と言われている。

 アゾフ連隊を立ち上げたビレスキー氏は極右政党のトップであり、初期の隊員には極右思想家が多かったことから、「ロシア系住民を抑圧するネオナチ集団だ」とロシア側は非難し、ウクライナ侵攻の口実にしたいわくつきの集団だ。

 ウクライナ政府は国家親衛隊への編入に当たってアゾフ連隊に「非政治化」を求めたことから、ビレスキー氏らは隊を去ったが、その後も同連隊と深いつながりがあるとされており、米下院は2015年、同連隊のことを「ネオナチ」と認定していた。

 だが、ロシアのウクライナ侵攻のせいでアゾフ連隊の「ネオナチ問題」に目をつぶり、米国から大量の軍事支援が行われているのが現状だが、気になるのはアゾフ連隊に米国を始め海外の極右主義者が義勇兵として少なからず合流していることだ。

 2001年9月の同時多発テロは米国からの支援で恩恵に浴したアルカイダの犯行だったが、米国内のテロの脅威は近年、イスラム過激主義の外国人ではなく、白人至上主義者など国内の極右主義者に変わりつつある。

 ウクライナに渡った米国の極右主義者が、自国政府がウクライナ軍に提供した取り扱いが容易なハイテク武器を手に入れれば、米国内で大規模テロを引き起こす可能性はないだろうか。考えるだけでもぞっとする話だ。

 米国は長年にわたり、ならず者国家やテロリスト集団など次々に現れる敵に対して、短兵急に戦いを仕掛け、そのたびに手痛いしっぺ返しを受けてきた経緯がある。ウクライナへの野放図な軍事支援のせいで同じ失敗を繰り返さないことを祈るばかりだ。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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