リスクを伴う米国によるウクライナへの軍事支援 自国の極右主義者の手に渡る可能性も

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別の勢力の手に渡ってしまう懸念

「米国の追加の軍事支援によりロシア軍の第2段階の軍事作戦を抑止できる」との期待が高まる一方、頭の痛い問題も浮上している。

 米CNNは19日、米国政府の軍事・情報担当者の話を引用し、「ウクライナに提供している大量の兵器を管理する方法がほとんどなく、これらの兵器がまったく別の勢力の手に渡ってしまう懸念が生じている」と報じた。

 米国はロシアの戦力を詳細に把握しているものの、ウクライナ軍についての情報が不足していることが関係している。米国からの軍事支援はウクライナ政府が提供する情報をもとに行われているが、彼らはより多くの支援を得るため、正確な情報を提供していない可能性があるとの指摘がある。

 米国が提供する兵器はトラックなどに載せられ、ポーランドとの国境でウクライナ軍に引き渡され、その後、兵器がどこに行き、どこに配備されるかはウクライナ軍が決めることになっているのが実情だ。

 ウクライナに米軍が配備されていないことから、兵器の移動や使用法についての監視・監督がなされておらず、米国防省高官は「ウクライナ軍の武器管理は短期的には信頼できるが、紛争が長期化すればその信頼性はゼロに下がる」ことを認めている。

 米国政府はウクライナ軍の軍備増強を最優先としており、兵器が「横流し」されるリスクを甘受していることから、「米国を始め西側諸国が大量の武器を支援するウクライナが今後、巨大な兵器の『ブラックホール』になってしまう」との懸念が高まっているのだ。

 米国政府はウクライナ政府の要求に応じて大量のスティンガーを供給しているが、この武器は旧ソ連がアフガニスタンに侵攻した際にも大活躍した。米国がアフガニスタンの抵抗勢力にスティンガーを大量に提供して旧ソ連の撤退を実現させた後、地方軍閥に巨額の資金を与えてスティンガーを回収しようとしたが、米国を敵視するアルカイダなどのイスラム主義武装勢力の手にも渡ってしまったことが確認されている。

 米国政府は2010年代前半にも、シリアのアサド政権を打倒するため、反政府軍に大量の武器を支援したが、横流しされた武器を大量に確保したイラクのスンニ派過激勢力が2014年に「イスラム国」を建国するという皮肉な結果を招いている。

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