知床観光船遭難事故 「強欲社長」の父が周囲に漏らした“高い保険に入っていてよかった”
事故当日の会話
北海道・知床半島の沖合で、乗客と乗員合わせて26人が乗った観光船が消息を絶った事故。背景に見え隠れするのは、観光船運営会社社長の強引な経営方針だった。しかも社長の親族は事件を受け、聞き捨てならない言葉を口にしていたという――。
***
事故後に行方をくらました問題の会社「知床遊覧船」の社長の名は、桂田精一氏という。地元斜里町で代々伝わる家の出である。
「奥さんは社長より20歳くらい若くてね、少し前に出産しているんです」
とは、桂田氏が暮らす斜里町の住民。
「で、事故があった日、たまたま社長と会ってあいさつしたんです。そしたら“今日、退院しました”って嬉しそうにしていて。今思い返すと、あれはまだ事故の起こる前、そうね、直前のことだったから、平気なふうだったんですね」
「安い賃金でスタッフを……」
桂田氏は道内の高校を卒業後、茨城県内の窯業指導所で陶磁器製造を学び、その後は都内でデザインの仕事に携わっていた。18年前、家業である民宿を引き継ぐために知床に戻り、以降は観光ホテル3軒やゲストハウス1軒、アパート2棟、観光船会社を持つなど経営を多角化していった。
一方、その経営は強引な手法の上に成り立ってもいたようだ。
「あの事業(遊覧船事業)は、元々は海のことをよく知っている人がやっていました。けれど、桂田社長が6年前、事務所から何から丸ごと買ったんです。その際、それまで働いていた経験豊富な従業員が全員解雇され、安い賃金でスタッフを雇いなおしたんです」(桂田氏の知人)
件の遊覧船KAZUI(ワン)は、昨年5月と6月に浅瀬に乗り上げるなどの事故を起こしている。そもそも波が穏やかな瀬戸内海仕様で、40年以上前に造船されたものであり、昨年の事故で船首に入ったヒビも満足に修理していなかったという証言もある。
「これまでも、天気が悪かろうと社長は船長に出航を強要していた。それに一度出航させたら最後、途中で天候が急変しても、払い戻しを嫌がってか、船長には“戻ってくるな”と言っていたようです」(町の漁業関係者)
つまり、今回の事故は人災の側面が強いのだ。今後、桂田氏はいかなる責任に問われるのか。
「掛け金が高い保険に入っていてよかった」
観光船業を行うため加入が要件である「船客傷害賠償責任保険」によって、最低でも遺族には3千万円が支払われることになるが、被害者への賠償はすべてこの保険でまかなわれることになるのか。事故後、元斜里町議である社長の父親はさる知人に、次のような聞き捨てならないことを口にしていたという。
「たまたま、今年から掛け金が高い保険に入っていてよかった。それにしても、船長がなぁ。海の状況に合わせて操縦する技術もないんだから」
事故の責めは一切、船長にあると言わんばかりである。
4月28日発売の「週刊新潮」では、桂田氏が今後負わされるであろう責任の程度や桂田氏の来し方と併せて詳報する。