司令官を“逮捕”、国防相は不自然な心臓発作… プーチン「大粛清」の意図とは
ロシア軍の誇る「旗艦」が沈んだのは、1905年、日本の連合艦隊がバルチック艦隊を壊滅させて以来のこと。プーチンにとって、その衝撃はいかばかりか。かくて独裁者は続発する想定外の事態に正常な判断力を失い、ますます禁断の道へと進もうとしている。
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その船、ミサイル巡洋艦「モスクワ」は全長186メートルもの大きさで、堂々首都の名を冠することでもわかるとおりロシア海軍ご自慢の軍艦である。長距離対空ミサイルや防空レーダーを備え、黒海艦隊における司令塔の役割を担ってきた。
沈んではならない、沈むはずのないその旗艦が海の藻屑と化したというニュース、いや特報が世界を駆け巡ったのは4月14日のことだった。
ウクライナ当局の発表によると13日、同国製の地対艦ミサイル「ネプチューン」2発が命中。弾薬に引火して爆発炎上した巨艦は500名を超す乗組員の多くを抱いたまま、ゆっくり丸1日かけて海底に消えたという。
拓殖大学海外事情研究所教授で元時事通信モスクワ支局長の名越健郎氏が語る。
「巡洋艦モスクワはソ連時代に就役した古い船で、もともとは『スラヴァ(栄光)』という名前でしたが、1995年に改称されました。特別な位置づけの艦が沈んだのですから、軍全体の士気に影響するのは間違いありません」
反戦の機運が高まる可能性
ロシア国内は情報統制下にあり、沈んだ原因は嵐で海の状況がよくなかったせいだと報じられ、ウクライナ軍の攻撃によるとは伝えられていないが、筑波学院大学の中村逸郎教授は、
「ロシア国民が受ける精神的ショックは計り知れない。今後、反戦の気運が高まる可能性さえあります」
と、心理的な打撃は広く市民にも及ぶと見立てる。
無論、軍にとっての戦略・戦術上の痛手はすでに指摘されるところだ。
軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏の話。
「黒海艦隊の中でモスクワだけがS300Fという長射程の対空ミサイルを備えていました。これによって航空機や巡航ミサイルを撃墜して艦隊全体を守るという役目を負っており、防空範囲はじつに半径200キロに及んだ。モスクワが黒海に面したウクライナの港オデーサの沖合で睨みを利かせていたため、ウクライナ空軍は同国南西部での活動を制限されてきましたが、今回、ロシア軍の防空網に穴を開けた形です」
防衛省防衛研究所の山添博史・主任研究官は、次のように続ける。
「これでウクライナ軍は、オデーサの守備に充てていた戦力を東方に振り向けることができる。大きな戦局の転換です」
モスクワの爆沈でプーチンおよびロシア軍首脳が受けたショックは、かつて日本の大本営が戦艦大和の沈没で受けたそれにも匹敵するとの見方さえある。
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