打撃はいいが…守備は心もとないウォーカーへ唯一の処方箋【柴田勲のセブンアイズ】

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外角低めの真っすぐ

 これは打者も同じだ。1番・吉川尚輝が落ちてきた。見ているとボール球に手を出し始めた。打者の基本は甘い球を見逃さないことに尽きるが徐々にできなくなってきた。

「1番・二塁」がしっかりしていればチームに好循環をもたらす。守備は文句なしだ。
基本を大事にしてもらいたい。

 エース・菅野智之は良くない、というよりも悪い。22日、7回を被安打7、1失点で3勝目を挙げたが彼本来の投球ではない。
 
 私はよく「外角低めの真っすぐ」を強調している。そこでこの日は111球すべてをチェックしながら見た。打者のベルト辺りに集中してほとんど変化球だった。真っすぐは10球、真ん中やや外角よりの低めの真っすぐは1球だった。

 スライダー、フォーク、カットボールなどを使ってなんとかごまかしながら投げていた。目一杯だった。よく1失点でしのいだ。投球術のなせるところだろうが、あれでは次回の登板で打たれると思う。
 
 真っすぐが思ったところにいかないから変化球に頼る。いまの投げ方だと高めに浮く。前回も記したがタテの変化球で勝負することも一考してもらいたい。このままだと完投できずに7回を2、3失点、いや4、5点を取られる投手になる。シーズンは長い。

ウォーカーのバットはチームに欠かせなくなっている

 打線は坂本勇人、グレゴリー・ポランコ、岡本和真、丸佳浩、そしてアダム・ウォーカーと機能している。そのウォーカーだが、守備が心もとない。打球への判断が悪い。スローイングもよくない。肩も弱そうだ。

 だが、そのバットはチームにとって欠かせなくなっている。まあ、欲を言えばきりがない。本人は一生懸命やっているのだが、俊敏な日本人と比較すると、どうしても緩慢に見えてしまう。手を抜いているように映る。

 外国人選手には細かいことを言ってもうるさがられる。でも、担当コーチは普段から通訳を通して、「打球が全部自分のところに来ると思って守ってくれよ」と伝えておく必要がある。

 本人は、「わかっているよ」と答えると思うのだが、常日頃から意識させることに意味がある。

 巨人の場合は松原聖弥、立岡宗一郎、若林晃弘と守備固めで起用できる選手がいる。リードしている試合展開では7、8回あたりで替えるのもいいが、本人もできることなら最後まで出たいはずだ。成績やこれからの給料のことがある。とにかく普段からの意識付けが大切だ。

 26日からはDeNA(横浜)、阪神(東京D)6連戦だ。2位・広島とは2ゲーム差だ。でも貯金があるのはいいね。邪魔にならない。さて首位固めできるか。要注目だ。
(成績は25日現在)

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮編集部

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