救急車のサイレンに“うるさい”苦情が急増 サイレンメーカーの涙ぐましい努力とは

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 救急車や消防車のサイレンは緊急時、周囲に注意を促すもの。人の命も関わることで、うるさかろうが仕方ないと思えるが、現代人は違うらしい。苦情が増えているというのである。

 東京消防庁によれば2017年から19年まで苦情は年100件ほど。これが20年には142件、21年には400件に急増した。ポンプ車など消防車に対してが77件、救急車が323件。

 内容は「サイレンやマイクの音がうるさい」「音量を下げてほしい」などだ。

 巣ごもりを強いられた人々のストレスの反映か。消防庁は「以下のようにご説明しています」と語る。

〈緊急自動車は要件としてサイレンを鳴らし、かつ赤色の警光灯をつけなければならないとされております。サイレンの音量についても一定以上の音量で鳴動させることが法律で定められ、サイレンを鳴らさないこと、一定の音量よりも小さくすることはできません〉

メーカーも努力しているが…

 ただし、これまで対策も講じられてきたという。

「20年ほど前になりますが、中部地方の消防本部からサイレンの音の苦情について相談がありました」

 とは大手サイレンメーカー「大阪サイレン製作所」の上岡幹宜社長。救急車の“ピーポー”音の原型を作った会社として有名だ。

「消防車は火事や事故がないと出動しませんが、救急車は頻繁に出動します。夜中の静かな時でも救急車は一定の音量のサイレンを鳴らさないといけないので、『寝ついた子どもが起きてしまった』というような苦情が度々来たのだそうです。そこで法規制の範囲内で音量や音色について工夫することにしました」

 例えば、出動の際にいきなり音を鳴らすのではなく、「救急車が出動します」というメッセージを流すアナウンス機能や、徐々に音量を上げるフェードイン機能などを開発。他にも、

「音色の質にも注意を払い、耳障りな音をなくして少しでも柔らかく聞こえるようにしました。また、病院に接近する救急車の音は、入院患者の耳に段々と大きく聞こえ、到着した途端にブツッと不意に途切れます。これによる心理的負担の解消のため、到着時に音がフェードアウトする機能も作ってみました」(同)

 とはいえ、だ。一昨年12月、大阪市で消防署に戻る途中の隊員がアイスクリームを購入。住民から声をかけられると、緊急時でないのに救急車のサイレンを鳴らして走り去ったことが今月5日に判明した。隊員たちは訓告などの処分を下されたが、これじゃさすがに怒られたってグウの音も出まい。

週刊新潮 2022年4月21日号掲載

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