価値観の変化に対応した地域のライフラインになる――細見研介(ファミリーマート代表取締役社長)【佐藤優の頂上対決】

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 各社合わせれば、全国に6万店もあるというコンビニ。いまや食品や生活用品の販売店という枠を超えて、防犯や防災、さらには地域支援の場としての役割も果たしつつある。その中で一層の変化を追求しているのが、ファミリーマートである。彼らの描くコンビニの未来とは、どんなものか。

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佐藤 私の自宅近所のファミリーマートには6席くらいのイートインスペースがあって、そこにいつも2~3時間は陣取っているお婆さんがいます。やってくる子供たちと話をするのが楽しみで、店員さんはそれを他のお客さんとトラブルにならないよう気を配りながら見守っているんですよ。それが実に見事なんです。

細見 ありがとうございます。私どもはいま店舗が1万6千店以上ありますが、サービスのレベルを合わせ、それを一律に上げていくのは非常に難しいんです。そうしたお話をうかがうと、現場は大変励みになります。

佐藤 私はその光景を見ながら、コンビニは、昔、子供と老人が一緒にいた駄菓子屋みたいな機能を持ち始めたと思いました。

細見 毎日来ていただけると、やはり人間関係ができてきますね。

佐藤 いまは都市部でも、小中学生はもちろん高校生くらいまで、コンビニは一つの社交場になっています。

細見 シニアの方もそうですね。これからのコンビニは、人間のつながりを作っていくことも、一つの役割だと考えています。

佐藤 かつて郵便局や銀行が果たしていた機能のかなりの部分はコンビニが代替しています。その役割は年々広がっていますね。

細見 先日、大阪の豊中市と包括連携協定を締結しました。子育て支援や防災・防犯、高齢者支援などで行政と連携し、地域のネットワークを一緒に作っていくことになったんです。

佐藤 地域のさまざまな課題に取り組む場にもなるのですね。

細見 コンビニは各社合わせると、6万店ほどになります。例えば防犯なら、何かあったらコンビニに駆け込んでください、と警察の方が言う時代になりました。

佐藤 コンビニの店長や店員が「特殊詐欺」を防いだとよく表彰されていますね。

細見 そうした防止案件だけでも年間500件くらいあります。豊中市とはまず2020年に子育て支援で連携協定を結び、今年になってそれをさまざまな分野に広げました。コンビニは社会のライフラインにもなって、日本の文化・風土に根づいてきていることを強く実感しています。

佐藤 豊中は私の叔父と叔母が住んでいた時期があって、昔はよく遊びに行きました。資料に細見さんの出身地とあったので、懐かしく思い出しました。あの街はファミリーマートと相性がいい気がしますね。

細見 これは偶然ですが、豊中市で一番数の多いコンビニはファミリーマートなんですよ(笑)。

佐藤 私にとってコンビニの利点は、プライベートブランドの食品に塩分の表示があることなんです。

細見 特定の成分は細かく表示しています。

佐藤 私は腎臓が悪くて今年から透析を受けているので、塩分摂取を制限されているんですね。だからその表示をよく見ているんですよ。例えば、おにぎりはだいたい0.9グラムから1.7グラム程度で、塩辛いと思っていても塩分が少ないとか、その逆があるなど、いろいろ勉強になります。

細見 お役に立てて何よりです。味には好き嫌いがありますからそれはそれとして、コンビニが販売する食品の品質管理は、世界でトップレベルにあると思います。ですから安心して食べていただける。それは自信を持って言えます。

佐藤 おいしさでいえば、ファミリーマートは、チキン系が群を抜いていますよね。いまは水分摂取量の制限もあってなかなか飲めませんが、「クリスピーチキン」は本当にビールによく合います。

細見 コンビニ食品は昨年の東京オリンピックでも、ずいぶん注目を集めました。

佐藤 「コンビニが好きすぎる記者」という外国人記者まで出てきましたね。

細見 餃子などのおいしさを、彼らが世界に発信してくれました。

佐藤 やはり他の国から見ると、24時間開いていて、生活に関わるさまざまなものがあり、しかも高品質で行き届いたサービスが提供される日本のコンビニは、驚きの対象なのだと思いますね。

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