次の月9は「杏」「坂口健太郎」のダブル主演 昔ならあり得ないミステリーが三作続く事情

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3クール連続でミステリーの「謎」

 1987年に始まった月9の場合、脚本家・坂元裕二氏(54)が2006年にオリジナル作品の「西遊記」「トップキャスター」を立て続けに書いたが、同じ作家の原作を連続で採用したことはない。前例が破られたのはフジが新川さんの原作に惚れ込んでいるからだ。

 それは異例の猛スピードでドラマ化が決まったことからも分かる。原作は「小説現代」に昨年12月号から連載され、今年3月号で完結したばかり。単行本はまだ世に出ていない。発売予定日は5月上旬。ドラマ化権を小説の完成前に取得していたのだ。

 月9の1月期作品が菅田将暉(29)主演の「ミステリと言う勿れ」だったのは記憶に新しい。こちらの原作は田村由美さんによる人気漫画だったものの、やはりミステリーだった。

 月9は1月期から7月期まで3クール連続でミステリーが続くことになる。これは月9史上、初めてのことだ。

 背景にはミステリーがファミリーの視聴者にウケやすいということがあるのだろう。月9がF1層(女性の20歳~34歳)の視聴者をメインターゲットとし、「恋愛ドラマ専科」のような放送枠だったのは既に昔話。1990年代までだ。現在の月9のターゲットはファミリーとされている。

 月9の近年のスポンサーを見てみると、それが分かる。花王、ジャパネット、エステー、サントリー、メナード化粧品、ギャラクシー。F1層だけ観てくれたら、それで良しとするようなスポンサーは見当たらない。恋愛ドラマがラブコメの「海月姫」(2018年)を最後に消えているのもうなずける。

 ミステリーはネットフリックスやユーネクストなどの有料配信、TVerなどの無料配信でも人気が高い。特に若い人に好まれているとされる。ミステリーは単に観るものでなく、ゲーム感覚で推理に挑めるところが10代から30代を惹き付けるのだろう。

「ミステリーと言う勿れ」は全12話の平均世帯視聴率が11.8%(7.2%)で成功した。第1話から第8話までの時点で無料配信のTVerでの再生数の合計も2389万に到達。民放ドラマ史上で最高を記録した(ビデオリサーチ調べ)。

 ドラマを放送するだけでなく、その作品を配信先に供給するビジネスも手掛ける近年の各局にとって、配信と親和性の高いミステリーは魅力的に違いない。フジも当然、意識しているのだろう。

 ただし、今後の月9がミステリーの指定席となるのかというと、そうではない。フジ関係者によると、作品の面白さを第一に考えたところ、結果的にミステリーが続くことになったという。月9の性格がミステリーで固定化されるわけではない。

 それでも月9の恋愛ドラマを観て育った現在の40代から50代以上は隔世の感だろう。1990年代の常識で考えたら、3クール連続のミステリーはあり得なかった。

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