地下芸人が地上波で大活躍、ブーム到来!彼らがいまウケている理由は?

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「地下芸人らしさ」とは

 そもそも、お笑い界全体では数千人から数万人の芸人がいると考えられているのだが、その中で世間に広く名前を知られているのは、テレビに出て活躍しているほんの一握りの芸人だけだ。それ以外の芸人は、ほとんどテレビに出ることもなく、お笑いライブに出演している。

 いわば、定義上はほとんどの芸人が「地下芸人」であるとも言える。だからこそ、地下芸人にもいろいろなタイプの人がいる。いかにも地下っぽいテレビでは放送できないような過激なネタをやる人もいれば、テレビでもそのまま通用しそうな正統派のネタをやる人もいる。

 芸人である限り、見る人を笑わせたいという気持ちは地上でも地下でも変わらない。「地下芸人らしさ」というのがあるとすれば、それは「自分が面白いと思う限りでどこまでも思い切ったことをやるべきである」という心構えのようなものだろう。

 そういう意味では「良くも悪くも荒っぽい」というのが地下芸人の特徴である。マヂカルラブリーの野田クリスタルはかつて「『エンタの神様』が人気だった頃、自分のまわりの地下芸人が一斉にエンタっぽいリズムネタをやり始めた」と語っていたことがある。地下芸人だからとがっているとか世間に迎合しないというわけではなく、むしろ長いものには巻かれるようなちゃっかりしたところもあるというのだ。

 地下っぽさとは、料理にたとえるならスパイスのようなものだ。基本的な味つけを整えた上で、適切な量のスパイスが加えられると風味が増す。しかし、くすぶっている時期が長い地下芸人は、往々にしてスパイスの量を増やしすぎて、世間で求められていることから離れてしまう。

 最近、地下芸人がテレビという「地上」に這い出てスポットを浴びているのは、お笑い界全体が活気づいている証である。ルール無用の地下芸人が続々と出てきて活躍するようになれば、テレビのお笑いシーンもますます刺激的で面白いものになるだろう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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