“制裁破り”の動きにバイデン大統領はイライラ…ロシア産原油の購入を拡大させるインドの言い分

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バイデンの「苦言」にインド財務相は…

 ウクライナ危機以降、インドはロシア産原油を大量に購入している。

 国際エネルギー機関(IEA)によれば、3月のロシア産原油の輸出量は日量570万バレルだった。最大の輸出先である欧州のシェアは2月の61%から41%と急低下し、中国のシェアはほぼ横ばいの24%だったのに対し、インドのシェアは9%と急上昇した。

 ロシア産原油が大幅な割引価格で売られていることが影響していることは間違いない。

「このような状態を放置すれば同盟国や友好国に示しがつかない」と憂慮した米国のバイデン大統領は4月11日のオンライン会談でインドのモディ首相に対して「ロシアからのエネルギー輸入を加速させてはならない」と釘を刺した。

 これに対し、インドのシタラマン財務相が「燃料が安く手に入るなら、なぜ買ってはいけないのか」と疑問を呈するなど両国の溝は埋まっていない。

 世界第3位の原油需要(日量約500万バレル)を誇るインドはロシア産原油の購入拡大に向けて着々と準備を進めているようだ。

 インドの中央銀行は3月中旬、インド・ルピーとロシア・ルーブルを使った貿易決済制度について検討を始めていた(3月18日付フィナンシャル・タイムズ)。詳細は明らかになっていないが、ロシアの中央銀行とインドの中央銀行がお互いに持ち合っている他国通貨の口座を使ってルーブルとルピーの交換を行い、民間の貿易決済を助ける仕組みだとされている。

 旧ソ連が構築した貿易圏であるコメコン(経済相互援助会議)内では貿易の大半は2国間の通貨建てだった。インドはコメコンの参加国ではなかったが、旧ソ連と広範に貿易を行っていた。インド中央銀行は1970年代から90年代前半にかけてルピーとルーブルの交換制度を運営してきた経験があり、国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの主要銀行が排除されたとしても、インドは対ロ貿易を継続させることが比較的容易なのかもしれない。「昨今のロシア産原油購入の決済は米ドルではなく、インド・ルピーとロシア・ルーブルが使用されている」とする観測も出ている。

 インドが今後もロシア産原油の購入を拡大するような事態となれば、「原油の禁輸によりロシアの戦争資金を断つ」という西側諸国の戦略が骨抜きになってしまう。

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