全日本女子柔道選手権 現役医学生「朝比奈沙羅」は準決で敗退 コロナ入院でスタミナ切れ

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新型コロナに感染していた朝比奈

 試合前、朝比奈は「ぶっつけ本番感が強いが、自分の力を出すこと」と意気込みを語っていた。試合後に会場で行われたリモート会見では、「退院して1週間でどこまで(コンディションを)つくれるかだったが、初戦からボロボロの状態で来てしまった。最後はスタミナの部分で負けちゃったのかな。技の威力は廃れてなかったが、体力も含めて自分の実力かなと。悔しい」などと語った。

 実は、朝比奈は新型コロナ感染で入院し、今月初めの体重別選手権(福岡市)を棄権しており、今回も出場が心配された。症状は軽かったが、重症化を用心して入院していたのだ。退院後、この日に向けて練習できたのはたった1週間。それでも初戦で泉真生(コマツ)を破ると、足達実佳(明治国際医療大学)を送り襟締め、井上あかり(JR東日本)を払い腰で叩きつけ、連続一本勝ちして準決勝に勝ち上がっていた。朝比奈の払い巻きこみや払い腰は、譬えて言うなら運動会の「大玉転がし」で突然、手が玉にくっついて離れなくなり、大玉に体が乗っかってしまったまま、ごろりと回って地面に叩きつけられる感じか。

 大会は、橋本を延長戦で破った冨田若春(コマツ)が2年ぶりに優勝した。また軽量の芳田司(東京五輪女子57キロ級銅メダル)が大奮戦し、自分の倍ほどある巨漢相手に2試合を勝ち進み、会場を沸かせた。

 昨年の東京オリンピックで若い素根輝(パーク24)に代表の座を奪われた朝比奈の去就が注目されていたが、パリ五輪を目指して現役続行することを表明した。昨年6月の世界選手権(ハンガリーのブダペスト)では日本人同士の決勝となり見事に優勝、2度目の世界チャンピオンとなっている。その試合、朝比奈は、自身に敗れて怪我をして歩けなかった冨田を背負って畳を降りた。100キロの冨田を背負ったまま、畳を降りる際に丁寧に観客に挨拶した姿が大きな感動を呼び、「世界王者を体現する素晴らしいスポーツマンシップ」と国際柔道連盟(IJF)に称賛された。

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