全日本女子柔道選手権 現役医学生「朝比奈沙羅」は準決で敗退 コロナ入院でスタミナ切れ

スポーツ

  • ブックマーク

 4月17日、体重無差別で女子柔道最強を決める全日本女子選手権(皇后杯)が、2年前に開館したばかりの横浜武道館で行われた。ドシーン、ドシーンと突然、地響きがした。朝比奈沙羅(25)=ビッグツリー=が、前の試合が終わるや筆者らの座る記者席のすぐ後ろで、ジャンプしたり腕や顔を叩いたりして気合を入れていたのだ。最近は以前のように四股は踏まないようだが、いつも楽しみにしているユニークな試合前の彼女の勇姿が戻ってきた。朝比奈にとって、久々の公式戦となった。それにしても140キロの体重であれだけ高くジャンプできる身体能力の高さに改めて驚く(粟野仁雄/ジャーナリスト)。

11分の死闘

 準決勝の相手は橋本朱未(27)=コマツ=。2年前の皇后杯では決勝にまで勝ち上がり、準優勝している強豪だ。いわゆる「ずんぐり型」で重量のあるタイプではなく、身長180センチ、体重100キロには見えない日本人離れした体躯の選手である。

 互いに右組。がっちりと組み合う。朝比奈は支え釣り込み足などで揺さぶる。橋本は内またをかけるが朝比奈は動じない。どうしても互いに技は少なく、橋本が先に「指導」を2つ受け、朝比奈が1つ受けたまま延長戦に。延長2分過ぎ、朝比奈が指導を取られて2つずつと並んだ。気合一番「イヤアーッ」と朝比奈が払い腰をかけるも、いち早く引き手を切った橋本は腹ばいにしか落ちない。長身の橋本は腕も長く懐が深い。密着しにくいから朝比奈も巻き込みにくい。2人は次第に疲労がたまるが、朝比奈の動きが先に鈍る。延長7分6秒、主審が朝比奈に3つ目の指導を与えた。朝比奈の「反則負け」。だが朝比奈は納得した表情で審判に軽く会釈し、畳を降りた。

 最後に「指導3つ」の反則で決まったのは残念だが、11分の死闘は素晴らしかった。朝比奈が観客席に挨拶して引き上げている間、試合会場の裏側に敷かれた選手控用の畳にたどり着いた橋本は、ばたりと倒れ込み仰向けになってしまう。心配した医療班が駆け付けた。

次ページ:新型コロナに感染していた朝比奈

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。