「日本にロシア人スパイは80人」 捜査のプロが明かす“スパイの見分け方”とは?
スパイを見分ける方法は“名刺”
氏は一方で、スパイを見分けるのは存外、難しいことではないとも語る。
「スパイかスパイじゃないかは、名刺を見るとすぐに分かります。通常の外交官であれば“文化担当”や“政務班”といった肩書が記載されていますが、“武官”であれば、まず間違いなくGRUです」
さらに、名刺に“外交官”とだけ印字しているなら、SVRかFSBなのだという。加えて、
「動きも通常と違う。点検行動をして、尾行をまこうとする。いわゆる“消毒”を行うのです」
彼らは、東京も隈なく知り尽くしている。
「一例を挙げれば、ロシアの工作員は、“消毒”のために大塚駅をよく利用します。ホームが一つで、その両側に山手線内回り、外回りの電車が停車するシンプルな構造だからです。降り立つと、同じ電車の降車客が全員、階段を使って改札口へ向かうまで見届けて、さらに端から端まで歩く。そんな具合に、ホームの顔ぶれを確認してから、数本後の電車へ乗り込みます」
なぜ逮捕できない?
手強い相手だ。警察はこの厄介な工作員と、日々どう向き合っているのか。
「基本的には秘匿尾行を行い、諜報員が誰と接触したかを監視します。協力者を逮捕して、情報漏洩の実態を解明するのが目標ですが、逮捕に持ち込めないこともある。機密情報を抜き取られる危険があると判断すれば、“強制尾行”も行います。電車ではつり革を掴んで隣りに立つ。トイレで用を足す時にも、わざわざ横に並ぶ。徹底して、見張っているとアピールするのです」
端的に言えば嫌がらせだが、その効果は抜群。強制尾行をすると、スパイは協力者に会わなくなるのだ。
もっとも、ここで一つの疑問が浮かぶ。なぜ、本人を直接逮捕することができないのか。
「ウィーン条約に加盟している国は、スパイでも外交官の資格を有するなら、外交特権を持ち、逮捕できない取り決めなんです」
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