ロシアの巡洋艦「モスクワ」が瞬く間に撃沈された理由 専門家は「窓と甲板」問題、足りない思想を指摘
長く就役した戦艦
軍艦の新規建造となると、数百億円から数千億円の予算が必要になる。軍事費の捻出に苦労している国家では、就役50年とか60年といった軍艦を改修しながら使っているケースも珍しくない。
「先進国でも、例外的に長い期間、就役した軍艦がありました。アメリカ海軍の『ニュージャージー』です。最初の就役は第二次世界大戦中の1943年。第5艦隊の旗艦としてレイテ沖海戦や硫黄島の戦い、沖縄戦で側面支援を担当しました。そして終戦を迎えると、1946年に予備役艦隊に入りました」(同・記者)
ところが1950年に再就役し、朝鮮戦争に参加。その後も海軍兵学校の生徒を乗せて訓練航海を行うなどしていたが、1957年に2度目の予備役艦隊入りとなった。
「3度目の就役は1968年で、『ニュージャージー』はベトナム戦争に参加、北ベトナム軍の拠点に向かって砲撃を行いました。翌69年に予備役艦隊に入ったのですが、82年に4度目の就役を果たします。当時のロナルド・レーガン大統領(1911~2004)が“戦艦の復活”を目玉政策としたためです。その際、16発のハープーン対艦ミサイルや32発のトマホーク巡航ミサイルが搭載されるなど、艦の“近代化”が行われました」(同・記者)
巡洋艦の「窓」
最終的に博物館に寄贈されたのは1999年。これほど長い期間、戦艦として第一線で稼働したケースは珍しい。
ただし「ニュージャージー」は、改修のたびに当時の最新技術が投入された。トマホークの搭載は、その象徴だ。これに対し「モスクワ」の“近代化”整備は、かなり遅れていたと考えられる。
軍事ジャーナリストの菊池征男氏は90年代、ロシア海軍の取材に成功。「モスクワ」と同型艦のスラヴァ級ミサイル巡洋艦にも乗船した。当時は就役10年くらいの時期であり、もちろん老朽化の懸念など全くなかった。ところが――
「乗船すると、気になったことが2つありました。1つ目は窓が多かったこと、2つ目は甲板が木造だったことです。私は日本海軍の設計を担当していた関係者に取材を重ねてきたので、この2つは非常に問題があることを理解していました」
窓が多いと被弾で損害を受けた際に浸水のリスクが増える。甲板が木造だと被弾した際に火災のリスクが増える。
「窓を減らすために軍艦を作り替えるのは馬鹿げています。急ごしらえの改修として、窓を鉄板で塞げばいいだけです。このような軍艦は様々な国の海軍に見られ、戦後でも珍しいものではありませんでした」(同・菊池氏)
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