テレ朝「未来への10カウント」は、50歳を目前に控えたキムタク向きの作品と言える理由

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かつてない「後ろ向き」のキムタク

 祥吾はかつてバンタム級の超高校級選手として国体(少年の部)やインターハイを制した。全国300校以上が加盟している高校ボクシング界で頂点に立ったのだから、スーパースターだ。けれどスポーツ推薦で入った大学で目をやられる。網膜剥離だった。

 ボクサーは目も含めた顔面を殴打されるため、網膜剥離を発症する選手が珍しくない。この病気は眼球の内側にある網膜が剥がれてしまうもので、視力が著しく低下する。失明に至ることもある。

 アマチュアの競技団体・日本ボクシング連盟は「網膜剥離が生じた場合、以後の競技は不可」と定めている。網膜剥離と診断されたら、どんな名選手もリングを去るしかないのだ。

 プロも以前は網膜剥離になると即引退だった。今も指定専門医が完治したと診断しないと現役続行は無理。亀田大毅氏(33)が2015年に引退したのも左目網膜剥離のためだった。

 たとえ目をやられなくてもボクシングは現役期間がほかのスポーツに比べて遥かに短い。パンチを食らった後遺症に後々まで悩まされる元選手もいる。栄光と悲劇が背中合わせのスポーツ。その分、ドラマチックであり、観る側を強く惹き付ける。ボクシングを題材にしたドラマやアニメも同じだ。

 祥吾の場合、ボクシング以外でも不幸に襲われる。恋女房の史織(波瑠)が「ごめんね」と言い残し、先立ってしまった。これはボクシングを奪われる以上に辛いはず。祥吾が「いつ死んでもいい」と厭世的になるのも無理はなかった。

 ここまでキムタクが後ろ向きのセリフを口にする連ドラは過去になかった。半面、もう50歳も見えてきたのだから、こんなセリフがあったっていい。世間の49歳だって辛いことが多いのだから。

 セミの抜け殻のような状態の祥吾を見かねて、母校・松葉台高校ボクシング部前監督の芦屋賢三(柄本明)と親友・甲斐誠一郎(安田顕)が動く。強引に同部のコーチに就任させた。

 最初は乗り気ではなかった祥吾だが、東大志望の3年生部員・伊庭海斗(高橋海人)とのスパーリングでチラッと熱くなった。本気まじりのパンチを当てて、海斗の肋骨にヒビを入れた。種火は付いたようだ。今後、どんどん熱くなり、再生していくのだろう。

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