テレ朝「未来への10カウント」は、50歳を目前に控えたキムタク向きの作品と言える理由

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 キムタクこと木村拓哉(49)の通算25作目の主演連続ドラマ「未来への10カウント」(木曜夜9時)は、挫折から復活への物語である。その点、映画「ロッキー」(1976年)、フジテレビのアニメ「あしたのジョー」(1970年)と同じ系譜にある。50歳を目前に控えたキムタク向きの作品と言えそうだ。

 キムタクが過去に演じてきた主人公は「小学生たちの憧れ」に選ばれそうな人物ばかりだった。

 一例は天才外科医(TBS「A LIFE~愛しき人~」2017年)、敏腕ボディガード(テレ朝「BG~身辺警護人~」2018年・2020年)カリスマシェフ(TBS「グランメゾン東京」2019年)…。

 今度は違う。一度は人生を投げた男。世の辛酸を舐めた大人たちに共感されそうな役柄である。「ロッキー」、「あしたのジョー」と同じ臭いを感じさせる。

「ロッキー」は落ちぶれたプロボクサーのロッキー(シルヴェスター・スタローン)が、恋人のエイドリアン(タリア・シャイア)のために再起を図り、へビー級王者と死闘を繰り広げる物語だった。今もテーマソングを聞くだけで涙ぐむオヤジ族がいる。

「あしたのジョー」は施設で育ったジョーこと矢吹丈がバンタム級で世界を目指す物語。宿敵で親友の力石徹が自分と戦った後に急死すると、心に深い傷を負うが、やがて復活する。こちらも永遠の名作だ。

 ロッキーとジョーは何もかも失い、ゼロからカムバックした。キムタクが「未来への10カウント」で演じている桐沢祥吾も一緒。母校のボクシング部のコーチとして人生の立て直しを図る。

 観る側が「そろそろ完璧なキムタクには飽きちゃったなぁ」と思い始めたところで、このドラマ。キムタクとジャニーズ事務所の担当者は昔から企画の選定がうまいのだ。これが長らく主演連ドラで高視聴率を続けている理由の1つである。

 キムタクにはドラマへの出演依頼が各局から絶え間なくあるが、ヘタな企画には乗っていない。桐沢祥吾役を採択したのは現在の自分にとってベストの役柄と判断したからにほかならない。

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