中田翔の打率はわずか1割9分4厘 どこがダメなのか【柴田勲のセブンアイズ】

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勝負の流れ

 一度相手に勝負の流れを渡すと、引き戻すことは容易ではない。とんでもない凡ミスで敗れると後々尾を引く。
 
 そういえば37年前は3タテを食らった。阪神とは対照的に3タテを引きずって開幕ダッシュに失敗した。10試合を3勝7敗と負け越してしまった。前年同様、3位でシーズンを終えた。

 阪神は今回の巨人戦で2勝したが立て直しは容易ではない。何度も指摘しているが、開幕のヤクルト戦における7点差をひっくり返されての負けはあまりにも痛かった。3、4年に1度の出来事が開幕戦で起こった。

 前述したが巨人が3タテを阻止したのは実に大きかった。イヤなムードになるところだった。2戦目を1得点で落としていたしジョー・ガンケルにてこずっていた。だがアダム・ウォーカーが4回2死1、2塁で逆転のアーチを放った。チャンスらしいチャンスはこの場面だけだった。体が前に突っ込まず変化球にうまく対応した。自信にもなっただろう。

 先発の赤星は糸井に一発を浴びたが、7回途中まで顔色を変えず、飄々(ひょうひょう)と投げていた。1失点。とにかくストライクが入る。四球で崩れる心配がない。(翁田)大勢にしても荒れ球だがストライクが取れる。まあ、そのうち打たれることもあるだろう。でも常にストライクを先行させて打たせて取る。基本に徹してほしい。

打率1割台はない

 少し気になるのがエース・菅野智之だ。

 再三にわたって書いてきたが、球が打者のベルト近辺に集まっている。最近はカットボール、スライダーを多投している。主武器だ。いまの投げ方だと、どうしてもボール1個くらいヒジが下がる。高さが中途半端になってしまう。

 結果として甘い球がベルト近辺にいく。横の変化よりも縦のカーブ、縦のスライダーで勝負するのもひとつの手ではないか。

 そして中田翔、打率が1割9分4厘だ。これはない。打席の姿を見ていると力強さを求めてバットを立てている。力が入っている。

 パワーがあってもいまの構えではダメだ。ポイントまで遠回りする。

 頭から耳のへんまでバットをもっと寝かせた方がいい。いまはバックスイングが小さいから上体が突っ込む。中田は守備がうまい。必要な選手だ。何度でも言う。打率1割台はない。

 20試合を消化し、もちろん収穫もある。吉川尚輝がやっと1番に定着しそうだ。ケガさえしなければいける。もともと身体能力が高い選手で守備は文句なしだ。ボール球に手を出さなくなった。これまではよく初球の低めのボール球を振っていた。

 対照的なのは松原聖弥だ。相変わらずボール球を振っている。振り回している。打者は打席では落ち着いて、甘い球を見逃さない。好球必打、これに尽きる。

 さて19日から東京ドームに首位・広島を迎えて3連戦だ。例年この時期のカープは強い。巨人がどんな戦いを見せてくれるのか。楽しみながら観戦したい。

(成績は18日現在)

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮編集部

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