韓国人はなぜ「ウクライナ」に冷たいのか ゼレンスキー演説を聴いたのは国会議員の2割
恩知らずで愚かな韓国
――韓国は異質な国なのですね。
鈴置:世界も「韓国の異質さ」に気付きました。米国は対ロシア制裁に加わろうとしない韓国を罵倒しました。国務省が所管するVOA(Voice of America)を通じ、「同盟国の中で唯一米国と行動を共にしない国」「恩知らずで愚かな国」と名指しで非難したのです(「中国が早くも『尹錫悦叩き』、米国は『なんちゃって親米はやめろ』」参照)。
「恩知らず」とは朝鮮戦争の際に世界中から助けて貰ったのに、ウクライナが同様の境遇に陥った時に知らん顔をした、という意味です。実は、韓国国会でのゼレンスキー演説も朝鮮戦争に言及しています。以下です。
・This could be seen in the 20th century. And you remember that. You know what it's like to defend your land. You remember when in the 1950s you were attacked by those who wanted to destroy your freedom.
「20世紀にはこんなこと[侵略戦争]が起こった。1950年代にあなたたちも、自由を破壊しようとする攻撃を受けただろう」とゼレンスキー大統領は韓国人に呼びかけた。
そのうえで武器供与を求めたのです。戦車「T-80」などウクライナの兵士にとって使い勝手のいいロシア製兵器が中心のようです。もちろん、ロシアの顔色を見る韓国は供与するつもりはない。屁理屈をこねて拒否しています。
「弱い輪」はQuadお断り
――尹錫悦政権になったら韓国は外交姿勢を変えませんか?
鈴置:米政府は楽観していません。3月19日、Quadへのオブザーバー参加を拒絶しました(「中国が早くも『尹錫悦叩き』、米国は『なんちゃって親米はやめろ』」参照)。それは尹錫悦次期政権が「米国回帰」の証として打ち出した目玉政策です。
本気で米国側に立つ覚悟がない韓国を、米国は日米豪印の対中包囲網たるQuadに入れるつもりはないのです。「腰の入らない韓国」を加えれば、中国が「同盟の最も弱い輪」となる韓国を狙い撃ちしてQuadを崩しに来るのは確実だからでしょう。
ワシントンポスト(WP)が当選後の尹錫悦氏にインタビューしましたが、やはり「腰の入らない韓国」にスポットを当てました。記者は「Quadの既存メンバーは、経済面で対中依存度の高い韓国を信頼できるパトナーと見なせるのか……」と聞いています。
一問一答「Interview with South Korea’s next president, Yoon Suk-yeol」(4月14日)からその部分を引用します。
・You want South Korea to join the Quad, which is a grouping to counter China’s rise. But South Korea is still heavily dependent on China economically, and of course it also has North Korea to think about.
・Given these circumstances, why should Quad members view South Korea as a credible partner and a potential new member? And how can South Korea diversify its economy so that it is less dependent on China?
これに対し尹錫悦氏は「政治と経済、つまり米中は両立できる」(South Korea can coexist between these economic and political issues when it comes to China and the United States.)と答えました。
すると、WPの記者は、政治的に米国に寄ったら中国から経済的にいじめられたTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)の配備問題を引き合いに出して「あなたの言う『政経分離』には現実性があるのか」とたたみかけました。
・You can talk about THAAD [a U.S. missile defense system deployed to South Korea] as a security matter, but it carried real economic costs for South Korea. So would you actually separate them? Is it realistic?
これはWPのインタビューというより、米政府による尹錫悦次期大統領への「口頭試問」です。なお、WPはウクライナに対する武器供与をするつもりはないかとも聞きましたが、尹錫悦氏は「様々な障害」を理由に拒否しました。
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