プーチン、150人スパイ粛清で権力基盤は崩壊寸前 諜報機関トップの“合成動画”を敢えて流した狙い

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失態の多いFSB

 とはいえ、ソ連崩壊後、ウクライナはれっきとした独立国であり、そのためFSBに「対外諜報」を行う部門が新設された。これが「第5局」であり、今回、プーチン大統領が粛清の対象とした部門だ。

「プーチン大統領の立場からすると、今回の粛清はやらなければならないものでした。自身のメンツがかかっているからです。例えば現在、ウクライナ政府はネット上に『FSBのスパイリスト』を公開しています。その数も600人以上という多さです。FSBにとっては大失態で、プーチン大統領は赤っ恥をかかされました。この責任を取らさないわけにはいきません」(同・山田氏)

 内部情報が相手に筒抜けだったわけで、なぜそんなミスを犯してしまったのか理解に苦しむ。

 だが山田氏によると、FSBは職員の縁故採用が横行するなど、組織の“ガバナンス”が機能していない傾向があったという。

「FSBは過去にも大失態を犯しました。それがロシアの反体制派指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏(45)に対する毒殺未遂事件でした。2020年、ナワリヌイ氏は毒を盛られ、移動中の飛行機内で重篤な状況になったのです。九死に一生を得たナワリヌイ氏は回復後すぐに、ロシアに強いメディアと組んで調査を行い、毒殺を企図したのはFSBだと突き止めました」(同・山田氏)

FSBの裏切り

 ナワリヌイ氏は更に実行犯も割り出し、何とFSBの上司のふりをして電話をかけた。「なぜ毒殺しようとしたのか」などと問いかけたのだが、その一部始終はメディア側が録音していた。

「FSBの実行犯は本物の上司だと信じてしまい、しどろもどろに弁解する様子が全て公開されました。確かにFSBは“格下”というイメージを持たれても仕方がないところがあります。組織としての問題点が少なくないのです」(同・山田氏)

 もちろん、まともな職員もいる。その場合、プーチン大統領が独裁者としての本性を現すにつれ、嫌気をさしていったようだ。

「ここ10年間ほどを見ても、少なからぬFSBのエージェントがイギリスに亡命しました。ガバナンスが効いていないため、FSBは屋台骨が腐っているような状態なのです。表面的にはプーチン大統領の支持基盤として機能しているように見えても、内部は酷い有様でした」(同・山田氏)

 毎日新聞(電子版)は4月10日、「苦戦するロシア軍、続く情報機関の内部告発 その信ぴょう性は」との記事を配信した。

 文中には《ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、ロシアの情報・治安機関、連邦保安庁(FSB)からの「内部告発」とされる手紙をロシアの人権活動家が公表し続けている》とある。

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