学校になじめなかった女優・内田紅甘 限界を迎えた18歳の彼女を救った出会いとは

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「すべておしまいにしたい」と思った学生時代

 漫画家の内田春菊を母に持つ、女優でエッセイストの内田紅甘さん。12年間、学校に通うことを苦痛に感じていた彼女は、高校卒業で限界を迎え、その後進学も就職もしなかったという。18歳の少女を暗闇から救った出会いとは――。

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 わが家には、トンという名の猫がいる。白くてふわふわで、瞳が淡い水色で、からだの末端だけ墨がにじんだようにグレーがかっている、トンキニーズという種類の猫だ。トンとの出会いは3年とすこし前。高校を出て大学に進まなかった私は、はじめての夏休みのない夏を過ごしていた。とはいえ、どこかに勤めたわけでもなかったから、毎日が夏休みのようなものだったのだけれど。好きな時間に寝て起きて、ひたすらだらだらしていたが、しかし部屋には重たい気分がなみなみと満ちていた。

 そもそも、私が進学も就職もしなかったのは、もう限界だったからなのだ。大きらいな学校に12年間も通い続けて、心身ともにすっかりやられていた。毎朝、乗り込んだバスが学校へ近づくにつれ呼吸が速まり、心臓がばくばくうるさくなるし、10代のくせに重度の肩こり、眠れないから目の下はまっくろ、もちろん精神も不安定で、すべておしまいにしたいと何度思ったことかしれない。いま思えば、そうまでして学校に通い続ける必要などなかったのだけれど、当時の私は「そんなこともできない自分に価値はない」と思い込んでいたのだ。どうにか無理して学校へ行く、みんなの普通が自分の普通であるふりをする、そうしてはじめてここにいることを許してもらえる気がしていた、というよりそれはひとつの真実だったと思う。

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