ニクラウス、46歳でのマスターズ優勝の舞台裏 新聞には「さっさと現役をやめろ」とも(小林信也)
4打差からの逆転
初日は74、2日目が71、まずまず静かなスタート。3日目に69をマークしてニクラウスは周囲を瞠目させた。首位グレッグ・ノーマンに4打差。二人の間にセベ・バレステロス、ベルンハルト・ランガー、ワトソン、それに中嶋常幸ら7選手がいた。この時点でもまだニクラウスの逆転優勝を想像した人は少なかった。
最終日、9番、10番、11番で3連続バーディーを奪い通算5アンダーに伸ばしたあたりから、奇跡を期待するファンの思いがオーガスタに広がり始めた。
12番はボギー。やはり夢は幻か、期待がしぼみかけた。だが、長く「打倒すべき対象」だった男の執念は生半可なものではなかった。
13番バーディーで5アンダーに戻す。ノーマンに代わって首位に立ったバレステロスは13番イーグルで9アンダーに伸ばした。首位との4打差は変わらない。
マスターズ史上最も感動的と語り継がれる奇跡のドラマは、いよいよ目に見えて動き始めた。いや、帝王が「天まで届かせるスウィング」の復活を決意した時から、奇跡の胎動は始まっていたのかもしれない。
15番でイーグル、16番でバーディーを奪うと、オーガスタ全体が揺れるほどの歓声が沸き起こった。それで動揺したか、バレステロスは15番で池に打ち込む。
ニクラウスは17番、3メートル以上のバーディーパットを沈め、ついに首位を奪った。そして18番はパー。14番から4連続バーディーで猛追するノーマンもパーなら二人が並ぶ。ニクラウスはプレーオフの準備をして待った。ノーマンは2打目をギャラリーに打ち込み、3打目を何とか乗せたが、4メートル半のパットを決められなかった。この瞬間、ニクラウスの史上最年長優勝が現実となったのだ。
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