「円神話崩壊」で「ドル建て商品」はアリ? 家計危機を乗り切るための資産防衛術

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円安が進むのは避けられない

 元モルガン銀行日本代表・東京支店長で経済評論家の藤巻健史氏もこう話す。

「ドル円を動かす要因は、経常収支と日米の金利差ですが、現状はこの二つが円安要因で一致してしまった。こんなことは私の長いトレーダー人生の中でも見たことがありません。日本は長らく経常黒字でしたが、もはや赤字が常態化しそうだと見られています。そしてアメリカではとんでもないインフレが起こっていますから、それを止めるためFRBは今年7回の利上げを実施すると言っている。バイデン大統領も11月には中間選挙が控え、国民が一番嫌がるインフレに対して金利を上げて対処しようとしている。日米の金利差はどんどん広がり円安が進むのは避けられません」

 かような状況に終わりが見えないとなれば、家計を守る策を講じる必要がある。事実、投資家の中には、米国に口座を作り資産を移すなど円による運用からドルに切り替える動きが起きている。だが、これまで円の預貯金に頼ってきただけの素人が手を出すのはリスクが高いのではないか。そう考える人は多いだろう。

急いで投資するのは禁物

「今後の生活が不安だからと、急いで手持ちの資産を投資に回そうとすれば、だいたい失敗します」

 と警鐘を鳴らすのは、家計の管理から投資に至るまで、お金にまつわるさまざまなアドバイスに定評のあるファイナンシャルプランナーの深野康彦氏である。

「たとえばドル建ての債券にしても、金利が高い時に買った方がいいわけですから、今はまだ早い。これからアメリカの金利がどんどん上がればチャンスがやってくるので、タイミングを慎重に見極める必要があります。また外貨預金も円をドルに換える際のコスト、手数料が高すぎて利益を出すのは大変なので、一概にはお勧めできません。とはいえ、今後も預金が劇的に増えることはありません。資産の一部を積み立てNISAなどコストの安い方法で米国株を運用していくのはありだと思います」

 大事なのは「変動する資産」を持ちすぎないことだと深野氏は言う。

「元本が保証されていない資産を持つ割合は『100-年齢』を上限にすべしという考え方があります。60代の方なら資産全体の3割くらいが変動資産の上限で、若年層ならもっと割合が大きくてもいい。それも一気にドル建て債券や投資に手を出すのではなく、NISAなどのように徐々に増やしていくイメージです」

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