「円神話崩壊」で「ドル建て商品」はアリ? 家計危機を乗り切るための資産防衛術

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 新年度が始まり心機一転といきたいところ、なんとも出鼻をくじかれる話題である。世界でドルと並び評価の高かった「円神話」が崩壊の兆しを見せ始め、日本は大丈夫なのかという嘆きが聞こえてくる。数々の難問が降りかかる今、我々の生活を守る術はあるのか。

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 緊迫する世界情勢の中で、「有事の円」ともてはやされた我が国の通貨が売られ続けている。円相場は1ドル120円を超え、3月28日には125円台まで下落。いわゆる「円安ドル高」の水準としては、2015年8月にまで遡る出来事として、大きく報道された。

 急激な「円安局面」に突入したのは、欧米の中央銀行が軒並み「ゼロ金利」から利上げへ踏み切ったことによる。特にインフレが40年ぶりの水準に高止まりした米国では、連邦準備制度理事会(FRB)が18年以来の決断を下したのだ。

 経済部デスクが解説する。

「この世界的な流れに取り残されたのが日本です。米国の金利上昇を受け、日銀の黒田総裁は、『指値オペ』と呼ばれる2兆円規模の国債買い入れを行い、なんとか金利を抑え込んでいる状態。今後も金利の低い円が売られ円安が進めば、原材料などの輸入物価が高騰し庶民の財布を直撃します」

前代未聞の事態

 折しもウクライナ情勢が長期化の様相を見せ、世界的な物価高、インフレへの流れは加速する一方だ。原油などの原材料価格が高騰した影響で、4月にはガソリンのみならず生鮮食品などの生活必需品からクリーニングなどの日常に欠かせないサービスの価格までもが上昇。円安の急進と原油などの資源価格の急騰が同時に起こるのは、1970年代のオイルショック以来で、値上げの春は家計にとっての「4月危機」なのだ。物価上昇で円の預金価値が目減りしていくとなれば、我々の暮らしはどうなってしまうのか。

「しばらく円安が続くのは間違いないでしょうし、底が見えません」

 とは、シグマ・キャピタル代表取締役兼チーフエコノミストの田代秀敏氏だ。

「外国為替のディーラー曰く、先月末の時点で円を買おうとする人がおらず、いつ売ろうかをうかがう人しかいない状況だったそうです。これまでは円安でも必ず買う人がいたわけで、こんな事態は前代未聞ですね」

 そう話す田代氏に、今後の見通しを尋ねると、

「少なくとも来年3月の黒田総裁の任期満了まで、円高に振れるような抜本的な介入は期待できそうもありません。これまでは円安が続いても、貿易収支が黒字になって円高に転換しましたが、現状は円安が進んでも貿易収支はずっと赤字のまま。日本企業の多くが工場を海外移転してしまっているので、貿易収支が黒字になって円高に戻るという過去の経験則は当てにならないのに、政府や日銀は今回の円安を問題視しない姿勢です」

 実際、財務省が先月公表した1月の経常収支はマイナス1兆1887億円で、2カ月連続で赤字を記録。過去2番目の赤字幅なのだ。

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