日テレ藤井アナ “とりたてて才能のない自分”が仕事でポジションを得られた理由 「自分の持ち味」の見つけ方

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「自分らしく働く」と言われても「自分の持ち味とは?」と悩んでしまうものです。日本テレビ「news every.」のキャスターとして、日々、自分の視点からメッセージを発信している藤井貴彦アナウンサーも、かつて悩んだといいます。その壁を破るためにはどうすればいいのか。の思考術を著書『伝わる仕組み―毎日の会話が変わる51のルール―』から紹介します。

ズムサタで学んだこと

 私がもし定年退職をする時に、1回だけ好きな番組に出ていいよと言われたら、土曜日の朝に放送している「ズームイン!!サタデー」という番組を選びます。ズムサタは私にとって初めてメインを担当した、いや、させてもらえた番組でした。

 日本テレビにはかつて「ズームイン!!朝!」という名物番組がありました。現在は、「ZIP!」という番組に替わり、ズームインという名を残すのはズムサタだけです。ズムサタには、徹底して番組を作り込み、視聴者とともに楽しむ「ズームイズム」が残っていて、スタッフの情熱は私たち出演者が感動するレベルでした。

 さてズムサタの担当初期は、笑顔も引きつるほどのプレッシャーがありました。

 2時間もの番組を無事に放送できるのかどうか。手が小刻みに震えたものです。毎年4月になると新人アナウンサーが入社してきますが、そのお披露目の番組をご覧になったことがあるでしょうか。きちんと話ができるのかこちらまでヒヤヒヤしますが、それだけテレビで「普通にお話をする」のは難しいのです。その上笑いを導きながら番組を進行するなんてさらに高いスキルが必要です。こんなことができる人はごくわずか。人気があって、忙しく仕事をするフリーアナウンサーは「奇跡の人」なのだと思います。一方の私にはそんな才能もなく、だからこそ毎週、必死の生放送でした。

自分の役割を決める

 そんな平均以下の私はある時、自分に役割を設定しました。

 それは「スタッフの思いを届けることに専念する」という役割です。番組のメインアナウンサーは4番打者であるべきで、チームをけん引しなければならないと思っていました。しかし、私にはそんな力はありません。それならば、スタッフの情熱をしっかりと届けられる人になろうと方針を変えたのです。これは全員野球とかチームワークといった言葉で言い換えられると思いますが、集団の中で自分がどんなポジションでいるべきかが理解できた時、それまでとは違ったやる気が生まれます。私も肩の力が抜けて、番組を楽しめるようになりました。

 ぜひみなさんも、今所属しているチームや組織を分析して、自分のポジションを割り出してみてください。私のように守備固めの下位打線を目指すことだって、立派な目標です。仕事に手応えがない、また自分らしくないポジションで苦しんでいるという方は、光が見えてくるかもしれません。適正なポジションが見つけ出せたら皆さんも必ず貢献できます。

 また、いつか4番打者になりたいと願う人は、まず今のポジションで経験を積みあげながら4番打者を目指してください。そこでの経験や成功体験が、長く活躍するためのトレーニングにつながります。

「細分化」で自分の持ち味は見えてくる

 自分の持ち味はどこにあるのか。自分のことなのに本当にわかりませんよね。

 ただ、長く続いた習い事、夢中になったスポーツなど、ご自身が取り組んできたものの中に持ち味のヒントはありそうです。自分にとって心地よい部分があったからこそ夢中になったはずですから、そこから探していくのは近道なのかもしれません。

 私は子供の頃からサッカーチームでフォワードという点を取るポジションを担当してきました。もちろん全国大会レベルの選手ではありませんが、なぜかやや高いレベルの試合でも得点をすることができました。といっても名選手には程遠かったのですが、「ボールの方向をうまく変えること」だけは得意だったのです。もらったパスをちょこっとだけゴール方向に変えるキックが得意で、そのキックが得点につながっていました。

どんな小さな持ち味でも特技につながる

 こんな小さなことですが、細分化してエッセンスだけを取り出すと、自分の持ち味が必ず見えてきます。自分の得意分野をエッセンス化することが、自分の持ち味を知る道なのではないかと思います。

 実は先ほどの私の特技は、番組の生放送にはとても役立っていて、50秒の原稿を35秒にして伝えることや、他人とのトークの方向性をスムーズに戻すことなど、自分は何も生み出せないくせに、方向性のコントロールだけはできてしまうのです。

 こういった細分化された特技や持ち味を自分で知ることこそ、より自分にフィットした舞台を見つける近道になると思います。

 さて、私と10年以上一緒に番組に出演している陣内貴美子さんはバドミントンの元オリンピック選手ですが、「一流アスリートは、試合の翌日にはまた同じ苦しい練習ができる」のだと教えてくれました。もちろん世界で勝つためには高い技術が必要だと思いますが、「同じことが毎日できる」ということも細分化された才能です。

 なおスタジオにいる陣内さんは毎日同じ時間に流れるCMを見て、毎回、同じところで笑っています。さすがです。

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※『伝わる仕組み―毎日の会話が変わる51のルール―』より一部を抜粋して構成。

藤井貴彦(ふじいたかひこ)
1971年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学環境情報学部卒。1994年日本テレビ入社。スポーツ実況アナウンサーとして、サッカー日本代表戦、高校サッカー選手権決勝、クラブワールドカップ決勝など、数々の試合を実況。2010年4月からは夕方の報道番組「news every.」のメインキャスターを務め、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などの際には、自ら現地に入って被災地の現状を伝えてきた。新型コロナウイルス報道では、視聴者に寄り添った呼びかけを続けて注目された。

デイリー新潮編集部

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