ウクライナがロシアのスパイ「620人リスト」を公開 元公安警察官が驚愕したワケ

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 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年勤め、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、ウクライナが公開したFSB(ロシア連邦保安庁)のスパイリストについて聞いた。

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 ウクライナ国防省は3月28日、ヨーロッパで活動するFSB(ロシア連邦保安庁)所属のスパイ620人のリストを公開した。そのリストは氏名だけでなく、生年月日や出生地、FSBの採用年月日や経歴、住所や電話番号、Eメールアドレス、はては旅券番号や所有車のナンバーまで記載されていた。加えて「酒癖が悪く交通違反が多い」などと、それぞれの“特徴“も書き込まれていた。

「FSBは、旧ソ連時代のKGB(国家保安委員会)の流れをくむ組織です。ロシア国内の防諜活動に従事していましたが、プーチンが長官を務めた1998年から権限を拡大。世界各国に工作員を潜入させるようになりました」

 と解説するのは、勝丸氏。かつて公安部外事1課に所属していた同氏は、ロシアを担当していた。

最も貴重なのはパスポート番号

「ウクライナはIT先進国で、ハッキングによってFSBのリストを入手しました。世界の諜報機関はすぐにこのリストをチェックしています。公開されたリストの中で最も貴重な情報は、パスポート番号です。これによって、現在赴任している国から他の国へ自由に行き来することはできなくなるでしょうね」

 FSBへの採用年月日と生年月日を見れば、そのスパイがベテランかどうか判断できるという。

「例えば2015年に採用ならキャリアは7年ですが、アカデミーで2年、本部で2年訓練するので、実務は3年となります。その人の年齢が45歳としたら、38歳で採用となり、民間の企業に籍を置いていて、社会人枠で採用されたことがわかります」

 リストには電話番号やEメールアドレスもあった。

「スパイは、赴任した国で必ず協力者をつくります。スパイが帰国した際、必ず後任に引き継ぐわけですが、電話番号やメールの履歴で、協力者があぶり出されるのです。リストに載った620人のスパイは、名前やパスポート番号を変えない限り二度と海外で活動できないと思います。さらに、何代にもわたって築き上げた協力者も次々にマークされて、役に立たなくなる。これは非常に大きな痛手となりますよ」

 そもそも、FSBがスパイのリストを作成していたことが驚きだという。

「警視庁公安部では、捜査員のリストは絶対に作りません。ハッキングされたらアウトだからです。FSBは官僚的な考えで、人事管理をするためにリストを作成したとみています」

 本来、サイバー攻撃を仕掛けるべきFSBが、逆にハッキングされてしまった。

「FSBはタガが緩んでいるということでしょう。プーチンも激怒しているでしょうね。」

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