プーチンが政権内で孤立する背景に“黒幕”が 要人の証言「大臣ですら簡単には面会できない」

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 ロシアによるウクライナ侵攻後、米英の情報機関などは、プーチンに正確な情報が伝わっていないとの分析を公表している。筑波学院大学の中村逸郎教授によると、その背景には政権内にいる“情報遮断の黒幕”がいるという――。

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 コロナが世界的に大流行する直前の一昨年2月、私はモスクワに赴き、旧友たちを訪ねて歩きました。詳細は伏せますけど、そのうちの一人が、エリツィン政権時代に閣僚級幹部だった大統領の側近でした。

 彼とひとしきりあいさつを交わし、ロシア国内政治の話題に移ったところで、こんな話を聞かされたのです。

「プーチンは政権運営の仕方をすっかり変えてしまった。古い側近を遠ざけ、代わりに大統領と年齢が20歳近く離れている人間を大統領府長官に指名し、傍に侍らせるようになった」

 その人物こそアントン・ワイノ。エストニア出身で、現在50歳の元外交官です。彼は父親がソ連通商代表部に勤務していた関係から、10代前半を日本で過ごしている。日本語が堪能で、駐日ロシア大使館でも勤務経験がある。30代前半で大統領府に転じ、政府官房長官等を歴任。2016年から現在の役職にあります。

「プーチンと簡単には面会できなくなった」

 先の友人はワイノについて、話をこう続けました。

「あいつの役割は“水道の蛇口”だ。やつが大統領府長官に就任してからというもの、ラブロフ(外相)やショイグ(国防相)すら、プーチンと簡単には面会できなくなった」

 私もこれを聞いた時は、少々耳を疑いました。ラブロフは04年から外相を務める最古参の閣僚ですし、ショイグもプーチンと毎年9月に休暇先のシベリアでマス釣りをして過ごす仲だからです。ですが、

「主要な閣僚であろうとも、プーチンと面談するためにはその理由などをA4用紙1枚に記し、ワイノに提出しなくてはならない。彼が不要と判断すれば、誰であろうとプーチンと口を利くことは許されない」

 それが友人の説明でした。

「ワイノはプーチンに心酔しきっており、客観的な判断ではなく、大統領の機嫌を損ねるか損ねないかが、報告すべき情報の取捨選択の基準になってしまっている」

 そうも嘆いていました。

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