子どものマスク、ワクチン接種を推奨せず… 「コロナ終結宣言」スウェーデンに学ぶ教訓

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12歳未満の健康な子供には接種を推奨しない

 新型コロナウイルス感染症は、年齢によってリスクに差があるため、高齢者の命を優先すれば子供たちの生活が犠牲になるという構図がどうしても生じてしまう。スウェーデンは子供の権利を非常に大切にする国であり、子供や若者に対する影響を最小限に抑えようとしてきた。とはいえ、逆に高齢者を犠牲にしたというのも誤解である。もともと通常診療においては、メリットがあると判断すれば高齢者に対しても高度先進医療を積極的に行っている。ワクチン接種が始まる前までは家に閉じこもっていた高齢者たちも、今ではマスクなしで街を闊歩している。

 ワクチンは他の国と同様、コロナ禍における最大の武器と位置付けられている。60代以上のブースター接種率は80%を超えており、80代以上の4回目接種も始まっている。しかしながら、子供たちは大人と比べてメリットに対する副反応の重みが大きくなるため、極めて慎重に接種年齢を下げてきた。モデルナ製のワクチンによって心筋炎のリスクが生じるとして、若者への接種をいち早く中断したのも、スウェーデンを含む北欧諸国だった(スウェーデンは30歳以下、デンマークは18歳未満に対する接種を中断)。今年1月には、12歳未満の健康な子供にはワクチン接種を推奨しないと発表した。稀だが重い副反応や長期的なリスクを考慮した結果、重症化リスクの低い健康な子供の場合、ワクチン接種によるメリットはリスクに比べて大きくないと判断されたのだ。

国民が分断されなかった

 介護施設や医療施設で働くスタッフの接種率に改善の余地があるため、一部の専門家から、そういった職種の人々には接種を義務付けるべきだという意見もあった。しかしながら最終的には、接種非接種の選択は国民一人一人に任されている。コロナ対策をめぐって、高齢者と若者、マスク着用者と非着用者、ワクチン接種者と非接種者というように、互いの立場によって国民同士が分断されることは、スウェーデンでは皆無とは言わないが顕著ではなかった。

 そして今月1日、スウェーデンでは、新型コロナウイルスは「社会に脅威を与えるウイルス」との位置付けから外された。海外からの入国制限も全撤廃で、ワクチン接種状況にかかわらず、陰性証明不要で入国できる。本格的にウイルスとの共存の道を歩み始めたスウェーデン。同国の経験から学べることは多いのではないだろうか。

宮川絢子(みやかわあやこ)
スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務。慶應義塾大学医学部卒。医学博士。日瑞泌尿器科専門医。カロリンスカ大学およびケンブリッジ大学でのポスドクを経て、2007年スウェーデンに移住。スウェーデン人の夫との間に男女の双子がいる。

週刊新潮 2022年4月14日号掲載

特別読物「一度もロックダウンせず『コロナ終結宣言』スウェーデンに学ぶ」より

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