ロシア国民のプーチン支持率は80% 識者が「東条内閣の末期を思い出す」という理由

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ロシアの“大本営発表”

 ロシアで愛国主義的な風潮が蔓延しているのは、ある“歴史の法則”からも分析ができるという。

「敗色が濃厚になってきた国家では、愛国的な言動が盛り上がるケースが多いのです。例えば、ナチスドイツの最後がそうでした。日本も太平洋戦争末期は、『進め一億火の玉だ』など、勇ましいスローガン一色となりました。私は昭和9年に生まれ、終戦時は小学校5年生でした。戦争中のことは鮮明に記憶しています。今のロシアを見ていると、東条英機(1884~1948)内閣の末期を思い出します」(同・佐瀬氏)

 神州不滅、無敵皇軍などといったプロパガンダ、虚偽の戦果を報じた大本営発表に代表される情報統制──確かに敗戦間近の日本と今のロシアは、重なり合うところがある。

 更に、ロシアは5月9日を戦勝記念日と位置づけている。独ソ戦に勝利したことを祝い、軍事パレードなど国威発揚を重視している。

「少なくとも5月9日までは、プーチン政権はプロパガンダと情報統制の手を緩めることはないでしょう。戦勝記念日が終わっても、ロシア人の愛国的な姿勢は、当分の間は続くと見ています。なぜかと言えば、少なからぬロシア人が長年にわたり、NATOに対して敵対的な意識を持ってきたからです」(同・佐瀬氏)

ロシア人は目を覚ますか?

 ロシア人のNATOに対する意識を考える際、重要なのがドイツの問題だという。NATOは1949年に発足したが、ドイツは当初、加盟国ではなかった。

「当時の西ドイツがNATOに加盟したのは1955年でした。これには普通のロシア人も強く反発したのです。プーチン大統領はNATOの東方拡大を問題視していますが、西ドイツのNATO加盟が東方拡大の“原点”です。NATOが東ドイツと対峙する格好になったためです」(同・佐瀬氏)

 1999年には、かつて旧東側諸国としてソ連と関係の深かったポーランドも加盟を果たした。今般のウクライナ侵攻でも、ポーランドはロシアに対して厳しい態度で臨んでいる。

「多くのロシア人が、難民の受け入れなどでウクライナを積極的に支援するポーランドを、苦々しい思いで見ています。その背後では、ドイツがウクライナに武器供与を行っています。NATO東方拡大の原点であるドイツと、NATOで最も東側に位置するポーランドに、普通のロシア人も反発を覚えているのです。愛国主義的な言動やプーチン支持の世論は、なかなか下火とはならないと見ています」(同・佐瀬氏)

 ロシア人が“目を覚ます”ことはないというわけだ。

デイリー新潮編集部

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