「服を脱げ」子どものすぐそばで母親を強姦、父親は銃殺 ロシア兵の許されざる蛮行
街中に遺体が散乱
こうした混乱の果てに、ロシア軍は首都攻略から撤退したわけだが、「一家の惨劇」以外にも、キーウ近郊のブチャには目を覆いたくなる痕跡が残されていた。
民家の地下室に、18人分の遺体が切断された状態で横たわっていた。中には14歳の子どものものもあったという。そして、道には後ろ手に縛られたままの民間人の遺体が放置。遺体を回収しようにも、ロシア軍が仕掛けた地雷のせいでままならない――英国のサンデー・タイムズやBBCはこう伝え、またAFP通信の取材にブチャの市長はこう答えている。
「街中に遺体が散乱し、少なくとも280人を集団墓地に埋葬した。女性や子どもも含まれていて全員が後頭部を銃で撃たれていた」
後に、ウクライナ検察当局は民間人410人の遺体を運び出したと発表。まさにジェノサイドである。
キーウへの再進軍は「現実的には無理」
近年稀に見る戦争犯罪、人道的配慮の欠片(かけら)もない悪逆無道、世紀の蛮行。いくら言葉を重ねても足りない暴虐を、ロシア軍はキーウ周辺で繰り返していたのである。「ロシア軍の錯乱」がうかがえる現下の状況を一体どう捉えるべきなのか。
元産経新聞モスクワ支局長で大和大学教授の佐々木正明氏はこう分析する。
「『ロシアは軍を再配置して、改めてキーウに攻め入り陥落させるつもりだ』との見方がありますが、一度撤退したところにもう一度進軍するには、最初の進軍と同程度の負担が掛かります。また、進軍し直すとなれば、では初めの進軍の時の犠牲は何だったのかという話にもなる。したがって、キーウに再進軍するというのはあくまでロシア軍の“ポーズ”に過ぎず、現実的には無理だと思います」
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