マンガに影響されて「吉原の超高級店」へ… ロリ系で売る23歳女性の告白で気になった“幼少時の記憶”

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 私はかれこれ30年以上、風俗やAV業界で「売る」仕事をしている女性たちを取材している。彼女たちの多くは借金など、仕方ない事情で業界にやって来る。が「ロリータファッション」で取材現場に現れた里美(23=仮名=)はそうではない。「漫画に影響されて」吉原のソープで働いた経験の持ち主だ。【酒井あゆみ/ノンフィクション作家】

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 つやつやの黒髪で幼い顔だち、細身で小柄……。里美はどこへ行っても「こういうお仕事は初めてで」が通用する見た目だ。彼女自身も自覚しているようで、「ロリ」を売りに吉原のソープランドに採用された。

「120分で8万円の店でした。でも(ソープでは定番の)マットプレイはやらなくていいってお店の人には言われてました。『うぶな素人』で売りたいから、テクニックはいらないって」

 ソープランドで「総額8万円」の店はいわゆる超高級店に位置づけられる。一般的には、実年齢で25歳、ある程度のルックスとスタイル、性格、所作などあらゆる条件が揃わないと働かせてもらえない。8、9割は面接で落とされるのが普通である。そのハードルを里美は難なくクリアしたわけだ。しかも「マット無し」で。

 彼女が吉原で働きたいと思ったきっかけは「遊郭」への強い憧れだった――と書けば、多くの読者は「鬼滅の刃」の遊郭編を思い浮かべることだろう。アニメ化の際に「遊郭が舞台だと子供に悪い影響を与えかねない」というナンセンスな批判がされていた。だが、あいにく里美は「鬼滅」に憧れたわけではない。

「『鬼滅』の描き方だと、別に観ても遊郭に憧れないんじゃ…(笑)。私が興味をもったきっかけは、高校生の時に読んだ『花宵道中』です(※宮木あや子の小説を基に漫画化した作品。2014年に映画化された際は安達祐実が主演し、オールヌードを披露し話題になった)。そこから遊郭に興味を持って、色んなアンダーグラウンドな場所を紹介するサイト『東京DEEP案内』にハマって。赤線の跡地をまわったりしていました。でも本当は吉原じゃなくて、もっとディープな飛田(新地)の『ちょんの間』で働きたかったんです。キスや前戯をしなくていいから楽そうだし。でも私が探していたタイミングでは募集がなくて。だからネットの募集を見て吉原に入ったんです」

 そうして憧れの「遊女」になったのが一年ほど前。本物の世界に入ってどうだったのか。

「お店の丁寧な対応は『ああ、漫画と同じくお客様を凄い大事にしてるな』ってちょっと感動しましたね。ただ私のような“吉原で働きたい”というモチベーションで居る女の子はいなくて、みんなカネカネしてんだな~と。風俗嬢としての意識は高いんでしょうけれど、ちょっとそこはがっかりでしたかね」

 とはいえそこは最高級店。「テレビに出ている人とか、世間では『先生』と呼ばれる職業のお客さんが多かった」そうで、

「印象に残っているお客さんはそうですね……ある小学校教師の方で『生徒と何人も付き合ってる』とぶっちゃけてきた人は引きました。『へえ、そうなんですね』としか相槌の打ちようがないですよね……。私がロリ顔で大人しい感じだし、なんか高圧的な自慢話をする人が多かったですね。仕事そのものは大変ではなかったんですけれど、ローションで皮膚が荒れてしまって……結局、半年ほどで辞めてしまいました」

 コロナ禍によって風俗業界に客が減り、あまり稼げなかったことも理由のひとつだったという。交通費や飲食代は自腹だったのにもかかわらず、「お茶」の日が続いた。

「そこでやっと、時給の出る仕事の方がいいと分かりました」

 そう、実は里美にはソープ以前にも多くの風俗店での勤務歴がある。JKリフレにソフトサービスの店、さらにはパパ活、SM倶楽部の女王様……。大人しそうなルックスからは想像もできないほどの「業界フルコース」を経験済なのだ。

 さらには着エロのモデルもやって、DVDも出したことがある。

「コロナで撮影会にお客さんが呼べず、休業中です。でも一応、事務所に今でも所属してます。コロナが落ち着いたら再開する予定です」

 ソープを辞めた今は、気が向いた時にJKリフレ、SMバーに出勤している。23歳で「JK」のフリをできるのも見た目のなせる業。さらに派遣として一般事務の仕事もしており、また今年に入って、コスプレイヤーなどが撮影場所として使う「レンタルスペース」を知人と共同で経営しはじめた。

「一般の金銭感覚を忘れないようにしたいので。働くのは苦にしないタイプなんです」

 インタビューの間、里見は髪の毛を指先で遊ばせてなでている。単なるクセなのだろうが、私は妙にその仕草が気になって仕方なかった。そして目が“死んで”いるのも気になる。恵まれたキラキラしたルックスなのに、目にだけ光がないのだ。

初体験の相手をSNSで募集

 里美の出身は中部地方のとある田舎町。会社員の父親と専業主婦の母親の間に一人っ子として生まれた。特に生活に不自由を感じたことはないが、あえていえば両親は喧嘩が耐えなかったと振り返る。

「まさに子供がいるから一緒にいるという夫婦。でも、個人的には別れればいいのに、っていつも思ってた。子供がいるから、私がいるから我慢、ってなんか嫌だったですね」

 ただしよくある「両親の不仲が理由でグレて、夜の世界へ」というほどのものではなさそうだ。いたって普通の家庭だったといえるだろう。

 高校は女子校だった。彼女のルックスからしたら、女子校に進んだからとはいえ、言い寄ってくる男の子は絶えなかったのではないだろうか。

「そういうのは全くなかったですね。そもそも男性に興味がなかった。どちらかといえば同性に性的な興味がありましたね。行動には移してませんが」

 同性に興味があったといいつつ、高校生のときに初体験を済ませている。なんとTwitterで「処女売ります」と書き込み、相手を募集したそうだ。

「もちろん、Twitterの顔写真はネットに落ちてた写真を使いました。なんで募集したか?なんか処女でいる意味がないな、って……。30人くらいからメッセージが来て、一番高い金額を提示してきたおじさんとラブホテルで。もらったのは25万円。一応、事前に向こうの顔も送ってもらっていたけど、会ったら向こうも『拾い画』でしたね(笑)」

 25万円を受け取ったはいいが、もしも親に見つかり、出所を問い詰められたらどうしよう――男性と別れたあとに急に怖くなり、お金は「そのへんの募金箱につっこんだ。たぶんコンビニのレジかどこかの」だそうだ。

 平凡な家庭に育ったというエピソードを話しながら、とつぜん、異様な初体験の告白である。やはり里美は、どこか性についての認識がおかしい。やんわりと「なにか、そういう性的なものに対する“めざめ”はあったのか」と尋ねても、芳しい答えは返ってこない。

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