ウクライナ在住日本人に訊く 戦争中でも努めて普通に暮らそうとするキーウの人々の心情

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中長期的な戦争に

 キーウの街は、一旦は落ち着きを取り戻しているようだが、侵攻が始まった直後は様子が違ったそうだ。

「侵攻が始まって1、2週間が精神的にかなり辛かったです。キーウでも爆撃の音が頻繁に聞こえ、街中にロシア軍の兵士が侵入した映像を見たこともありました。まもなく自分の住んでいる街が壊され、友達や同僚が殺されてしまうのではないか、これまで自分が築き上げたものが全て壊されてしまうんじゃないかと怖くなりました。ロシアはゼレンスキー政権転覆を目指していると見られていましたし、さらに国外の分析では、侵攻が始まって1週間程度でキーウが陥落するという予測も出ていました」(同)

 ウクライナ軍の善戦により予測は外れ、その後、ロシア軍はキーウ周辺から引き上げたと報道された。

「ひとまず安心すると同時に、これからは中長期的な戦争に入ったと思いました。ロシアの侵攻に対抗するために、まずは自分たちの生活を守ろうという風に多くの人が考えるようになったのはその頃です」(同)

ゼレンスキー大統領が「働けるなら働こう」

 街のお店も徐々に営業を再開した。

「中長期的な戦争になったからこそ、ウクライナ経済が倒れてしまわないようにすることが大切です。そのためにも、国民が仕事をし、公共料金を払い、税金を納め続ける必要があり、それが回り回ってウクライナ軍を支えることにも繋がります。ウクライナの人たちは、国土を守るために、ひとりひとりが自分に出来る努力をしたいと思っています。中には志願して兵士になる人もいますが、実際に武器を持って戦うことだけでなく、国民が生活基盤を維持することも、戦争に勝つために必要なことです」(同)

 ウクライナ国民が一致団結出来るのは、ゼレンスキー大統領が国民に伝えるメッセージによるところが大きいという。

「先日、大統領は『働けるなら働こう。みんな出来る範囲で生活を維持しよう。それがウクライナのためになる』といったメッセージを出しました。政府からのメッセージを受けて、皆が周りの人と話し合って、お互いに何が出来るのか考えています。住んでいた家を追われた人が避難先で仕事を見つける動きもあり、仕事やボランティアなど働き先を見つけるためのSNSのアカウントもあります」(同)

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