妻の「信じがたい秘密」を知って吐き気が止まらない… 43歳男性の苦しき胸のうち

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「妻の秘密」を知ったとき、夫としてはどう振る舞うのが正しいのか。もちろん状況によるが、「自分はすでに傷ついている妻を、さらに傷つけたのではないか」と考え、「今後、どうやって生きていけばいいかわからない」と言う男性がいる。話は複雑な上、非常にやりきれないものだった。【亀山早苗/フリーライター】

「一生、誰にも言わないつもりでした。だけど重すぎて自分ひとりでは持ちこたえられない。少しだけ吐き出したくなったんです。こんな言い方は失礼だと思いますが」

 佐久間浩之さん(43歳・仮名=以下同)の眉間には年齢不相応な深いしわが刻まれている。いつも眉間を寄せて悩んでいたのかもしれない。

 彼は日本海を見渡せる地域で生まれ育った。大学は関西へ、そして就職して5年目に東京勤務となった。代々、漁師だった父親は「おまえは好きな道を歩け」と言って、彼が東京へ来たその年の暮れに亡くなった。まだ55歳だった。それ以降、姉一家が母と同居してくれている。

「僕は姉と妹の間に挟まれた長男という立場でした。家には父方の祖母もいましたが、母と祖母の仲はよかったですね。ふたりで父をやり込める場面もたくさん見ました。女性は強い、逆らってはいけないと思いながら育ってきたんです」

 学生時代からつきあっている彼女がいたが、やはり彼が東京に来た年、彼女は留学すると言って去っていった。「結婚より自分のやりたいことを選ぶ」という言葉を残して。

「東京に来た年は、大事なものをたくさん失いました。でもその代わり、いろいろなしがらみから解き放たれたともいえる。高校時代、バンドを組んでいたことがあるんです。社内に音楽サークルがあったので参加したら、久々に音楽にはまりました。休日にみんなで練習して社内で披露する場も設けた。仕事に支障が出なければそんなこともできる会社なんですよ」

 バンド活動を応援してくれた社員たちもいる。その中のひとり、芙美香さん(40歳)と親しくなった。そして30歳のとき27歳の彼女と結婚した。

「年下なんだけど年上みたいに落ち着いた女性です。しっかりしていて、ときに辛辣なことも言う。僕は女性には逆らえないから、しっかり引っ張っていってくれるタイプのほうがいいんです」

妻のことがわからない

 彼女は13歳のときに母を病気で亡くし、それ以来、父とふたりで暮らしてきたと打ち明けた。父親に会いに行くと、「娘をよろしく頼みます」と深く頭を下げられて恐縮しきりだったそうだ。

「義父と同居しなければいけないのかと一瞬、思いましたが、芙美香はそのつもりはないと言いました。ただ、当時、55歳の義父には持病があったので、だったら近くに住もうと言うとホッとしたような顔をしていましたね。本当は一緒に住みたかったのかもしれないけど」

 妻の実家から徒歩10分ほどの場所にふたりはマンションを借りた。芙美香さんは翌年、長女を出産、2年後に次女を産んだ。浩之さんは「やはりうちは女ばかりになりました」と少しだけ微笑んだ。

「子どもはかわいかったし、家庭はそれなりに楽しかった」が、次女を産んでから妻の精神状態が少し不安定になっているようで、それだけが心配だったという。妻は浩之さんの勧めもあって、ふたり目を出産すると会社を辞めた。幼い子を抱えて仕事を続けるのはむずかしかったからだ。

「専業主婦も大変ですけどね。だから僕は手抜き大歓迎だったし、なるべく早く帰って子どもの面倒をみるようにしていました。それでも、僕の心の中にはいつもなんだかわからないけど、不安みたいなものがあったんです。一言でいってしまえば、妻のことがわからない。しっかりしているし、周りから信頼されるタイプでもある。たとえばマンションの管理会社と何か折衝しなければいけないようなとき、彼女は本当に見事にやるんです。入居した当時、玄関はチャイムがあるだけだったんですが、それをカメラ付きのインターフォンに変えるよう管理会社を説得したのは妻。近所の人と話していて、自ら頼んでみると言い出したそう。『お宅の芙美香さんのおかげで安心だわ』とけっこう言ってもらいました。誰かのために何かをするのが苦ではない、率先してやる。それが彼女なんです」

 それなのにときどき、何を考えているのかぼうっとしていることがある。夜中にしくしく泣いているのを見たときは、思わず抱きしめて「どうしたんだ」と言った。だが彼女は何も答えない。彼女の中に、消すことのできない何かがあるのではないか。彼はそう感じていた。

「でも人って、本当につらいことは聞いても答えないでしょ。彼女が自ら話すのを待つしかないと思っていました」

 家の中が暗い雰囲気になっているわけではない。妻はいつでも子どもたちの前では「元気で明るいママ」だった。だからこそ、夜中に泣いている妻が気になった。

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