くら寿司に巨大「ビッくらポン」が登場… 「エンタメ外食」が増えるワケ
新型コロナの感染拡大はまだまだ予断を許さないとはいえ、「まんぼう」解除によって、日常生活は少しずつ戻りつつある。痛手を被った外食業界は巻き返しを図りたいところだが、最近は「エンタメ」をキーワードにした新たな試みが増えている。その理由を探った。
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3月31日に東京・スカイツリー前にオープンしたのは“世界最大の回転寿司”を謳う「くら寿司 スカイツリー押上駅前店」。通常店舗の倍の床面積を誇り、佐藤可士和氏デザインの2階建ての店舗には、じつに277席を構えている。店舗のスケール感もさることながら、売りは2つの「アトラクション」だ。
ひとつは、寿司皿5枚を投入するごとに景品が当たる同店おなじみのゲーム「ビッくらポン!」の巨大版、「ビッくらポン!DX」だ。壁一面を使い、より豪華な仕掛けで演出を楽しめる。もうひとつは「ビッくらギョ!」という射的ゲーム。デジタル画面で魚を捕まえ、その成績に応じた数の景品がもらえるというもの。どちらも会計後に遊べる仕掛けとなっている。
こうした企画をくら寿司は〈店内エンターテイメントアトラクション〉(公式リリースより)と呼称しているが、同じように「エンタメ」性を売りにした外食が増えている。
バーベキューを食べながら謎解き!?
たとえば京都・三条木屋町の「狐食堂」は、“「本格グルメ」×「世界標準エンターテイメント」”を掲げ、3月22日にオープンした。もともと韓国料理・中華が楽しめる居酒屋だった狐食堂が、別フロアにあったナイトクラブ「KITSUNE KYOTO」に組み込まれることになり、新たに“お立ち台”の上でのダンスやDJパフォーマンスを楽しみながら食事を楽しめる店に。同店が名乗るのは「エンタメ居酒屋」だ。
また、4月1日に神奈川県の横浜ワールドポーターズの屋上に登場したのは「GLAMOROUS SMOKED BBQ iburu in 横浜みなとみらい」。こちらは“エンタメバーベキュー施設”で、食事と共にさまざまなエンタメコンテンツを提供していくコンセプトだと。現在、その第一弾として実施中なのは「怪盗ヌスミーとお食事探偵団~守れ!黄金の燻製肉!!」という謎解きゲーム。用意されたシナリオを基に参加者たちが登場人物になりきり、事件の犯人を探し出すという趣向のテーブルゲームである。いわゆる「マーダーミステリー」という、中国で人気に火がついたジャンルだ(1テーブル2000円)。横浜の景色を楽しみながら肉を食べ、そして謎解きを楽しむという趣向である。
増える「エンタメ外食」について、マーケティングアナリストの渡辺広明氏は次のように指摘する。
「エンターテイメントを売りにした外食というのは今に始まったわけではなく、たとえば2006年に第一号店がオープンした『アントニオ猪木酒場』などがその最たる例でしょう。プロレスファンなどをうまく取り込み、一時は全国に7店舗を展開していました。コロナのあおりを受けて、2年前に撤退してしまったようですが……いま増えつつあるエンタメ外食店も、提供するコンテンツ自体に、それほど目新しさがあるわけではありません。ただ店側が『エンタメ推し』をすることは新たな流れといえるでしょう」
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