廃墟だらけ、土産物屋にはプーチンTシャツが……ロシアの軍事介入で独立した国の荒廃
「いたるところに廃墟が」
目下、ウクライナへ侵攻を続けるロシア軍は、ドンバス地方など、親ロ派が支配的な東部に戦力を集中して制圧を目指している。仮にロシアの計画通りに進んでしまえば、ウクライナ東部の景色はどうなってしまうのか――。示唆的なのが、ロシアを後ろ盾にジョージア(当時グルジア)からの分離独立を一方的に宣言したアブハジア自治共和国である。そこでは、あたかも占領下のような風景が広がっているのだ。
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【写真20枚】プーチンTシャツ、レーニンのモニュメント…複雑な来歴を象徴する“占領”の風景
黒海の東岸にあるアブハジアは、ロシア人が多く訪れる保養地である。“親ロ感情”の表れなのか、お土産物屋さんにはプーチン大統領の姿がプリントされたTシャツが何種類も販売されている。
2015年にこの地を訪れた映像ディレクターの比呂啓氏は言う。
「アブハジアの人は大人しい雰囲気でした。どこかの平和な、少し寂しい国といった印象です」
ジョージアからアブハジアに入る際には、境界でロシア軍とアブハジア軍からのダブルチェックが必要だ。
「ジョージア人を追い出したので、ここに住んでいるのは“アブハジア人”ばかり。人口密度が低く、至るところで廃墟が見られました」
街中にはレーニンのモニュメントが
街自体が物々しいわけではないが、アブハジアの大統領や兵士をたたえるポスターや看板があちこちに。また、ロシア革命の英雄レーニンのモニュメントも珍しくない。複雑な経緯を持つこの地を象徴しているようだ。
同じ状況の地域が、ジョージア国内にはもう一つ、南オセチアだ。南オセチアとジョージアの“境界”には、南オセチア側が勝手に設置した柵があり、年に何度か柵がジョージア側に侵食してくるという。
仮にロシアの計画通りに進めば、アブハジアと南オセチアの“占領”の風景はウクライナにとって他人事ではなくなってしまうのだ。