藤子不二雄Aさんが愛した「トキワ荘ラーメン」に大勢の“弔問客” 女将が振り返る巨匠との思い出
「オバケのQ太郎」、「忍者ハットリくん」、「怪物くん」などの作品で知られる漫画家の藤子不二雄Aさん(本名・安孫子素雄)が、7日、息を引き取った。88歳だった。藤子Aさんと言えば、「ラーメンの小池さん」を思い浮かべる人も多いはず。訃報が流れた翌日、藤子Aさんがトキワ荘に住んでいた頃に行きつけだった「中華料理 松葉」(東京都・豊島区)を訪ねると、巨匠が愛した味を懐かしむ大勢の客が駆けつけていた。
***
【写真】巨匠が愛した「ラーメン」。昭和から受け継がれた懐かしい味だ
店の前には行列
「いや~、やっぱりラーメンは松葉に限るなあ!」
藤子Aさんの代表作の自伝的作品「まんが道」には、トキワ荘のメンバーが松葉のラーメンを「ンマーイ!」と感嘆しながら食べるシーンがよく出てくる。
都営大江戸線「落合南長崎駅」から徒歩8分。300メートルほどの小さな商店街の外れに、かつて「トキワ荘」はあった。昭和20~30年代にかけて、手塚治虫、藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫など昭和を代表する漫画家たちが共同生活していた伝説のアパートである。老朽化のため、82年に取り壊されたが、向かいのラーメン店「松葉」は今も営業を続けている。
訃報が流れた翌日の午後1時過ぎに松葉を訪ねてみると、店の前に7、8人の行列ができていた。出てきた20代のカップルに声をかけると、「『まんが道』で予習してきてから食べに来ました」。ニュースで「松葉」も頻繁に取り上げられたため、藤子Aさんが愛したラーメンを求め、客が押し寄せているのである。
懐かしい昭和の味
「昨日は午後から取材も殺到しちゃって、もう大変。もう少ししたら手が開くから待っててね」
店主の山本麗華(58)さんは大忙しである。話を聞く前に、まずは藤子Aさんが愛してやまなかったラーメンからご賞味させていただくことにしよう。
10分ほどして出てきたのは、昭和感漂う昔ながらのラーメン(600円)である。具材は、ワカメ、ゆで卵、ネギ、メンマ、チャーシュー。まずはスープを一口。煮干しのダシが効いたあっさりとした醤油味だ。中細麺によく絡んで、ンマーイ。
「先生はよく餃子とセットで頼んでいたのよ」というので、餃子(400円)も注文。焦げ目ができるほどパリパリに焼かれ、中には野菜たっぷりの餡が詰まっている。これまた、ビールが進みそうな絶品だ。
[1/2ページ]