全日本選抜柔道体重別選手権 阿部一二三がライバル・丸山城志郎との決勝で見せた自信
高藤を畳に叩きつけた「平成の三四郎」二世
阿部が審判にアピールするのは珍しい。審判へのアピールを「専売特許(?)」としているのは60キロ級の高藤直寿(28、パーク24)だ。
その高藤は順当に勝ち上がった。決勝の相手は「平成の三四郎」と呼ばれ、昨年3月に53歳で亡くなった古賀稔彦さんの息子の古賀玄暉(23、旭化成)だ。高藤を右に組み止めると左組の高藤は、低い姿勢で半身になってしのいでいたが、2分1秒、電光石火、古賀の右足が高藤の左足ふくらはぎに飛んだ。内またを警戒する動きの高藤は意表をつかれ、畳に叩きつけられて天を仰いだ。鮮やかな「出足払い」だった。
バルセロナ五輪71キロ級の金メダリストの古賀稔彦さんは、かつてこの大会で6連覇した。息子は「6連覇はすごいことだと思った。高藤さんはいつかは勝たなくてはならない存在。ここで勝ててよかった」と話した。3月に「一周忌」を済ませ、父がLINEに残した「技ありを取っても攻め続けろ」という言葉を見て気合を入れたという。
敗れた試合巧者の高藤は「様子を見ていたらやられてしまった。今日は試合を楽しめた」とちょっと負け惜しみっぽく脱帽した。世界選手権は、実績から高藤が代表となった。
永瀬貴規、羽賀龍之介が優勝
81キロ級では東京五輪金メダリストの永瀬貴規(28、旭化成)が決勝で、同門の後輩藤原宗太郎(23、旭化成)から、延長戦の大外刈りで一本を取り優勝した。(公式記録は「大外刈り」だがどう見ても「足車」に見えた)。永瀬はこれで6度目の優勝。「相手のペースでしたがチャンスが来ると思って粘り強く戦えた。『81キロ級は永瀬だ』と思わせ、五輪連覇を目指したい」と語った。
100キロ級ではリオ五輪の銅メダリストの羽賀龍之介(30、旭化成)が3年ぶりに優勝した。伝家の宝刀「内また」などで勝ち上がり、決勝では若手の山口貴也(22、ALSOK)を寝技の三角締めで「参った」させた。東京五輪では優勝したウルフ・アロン(26、了徳寺大職員)に代表の座を奪われたが、アロンはこの大会をけがで欠場していた。勝利の瞬間、少し涙を見せた精悍な顔つきのベテランは「東京五輪で代表になれず、やめてもいいかと思ったけど頑張れた。僕のキャリアなら内容は関係なく、勝つか負けるか。負ければ次につながらない。自分でできることを積み上げたい」と話した。
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