〈カムカム〉最終回で読み解く藤本脚本の奥深さ なぜ丸いものが数多く登場した?

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森山が起用されたワケは…

 一部で反対の声も上がったらしい森山の起用について、ラジオの告白を聴き、人選に合点がいった人は多いのではないか。

 名優になる条件は「1に声、2に顔、3に姿」と古くから言い伝えられている。役者の素質で最も重要なのは声。歌手が本業である森山は声が抜群に良い。

 終盤のクライマックスだった告白の場面は声がカギだった。制作側は役者の声質も熟慮したに違いない。結果、森山による安子の切々たる訴えに胸を突かれた人は多いはずだ。

 アニーがヒラカワと称していた理由は3月29日の本稿の通り。本当の自分と決別し、大好きな同郷のラジオ英語講師・平川唯一さん(さだまさし)の名前を借りていたから。ワシントン州立大演劇科卒の経歴も平川さんに合わせていた。

 アニーと名乗っていたのも同日付本稿の通りアン(安子=あんこ)の通名だからだった。ヘレン・ケラーの恩師であるアン・サリヴァンの通名もアニーだ。ウィリアムがビリーなのと同じである。

 るいと錠一郞は岡山に戻る。そして「ディッパーマウス・ブルース」を引き継ぐ。るいは安子を思い出すのが辛くて故郷を離れたが、安子と和解すれば戻らぬ理由はない。

 懐かしい人の血族との関係も戻ってきた。安子とるいが大阪で暮らしていた第23話(1946年)のころ、2人にやさしくしてくれた主婦・小川澄子(紺野まひる)の孫・未来(同)が、ひなたと出会った(109話、2022年)。

 未来はNHKの制作者として、ひなたに英語講座の講師を依頼した。ひなたは未来の期待に応え、結果的に安子、るいへの恩返しをする。

 ひなたは伝説の講師・平川さんの再来となるのだろう。ひなたの英語講座が、現代の「カムカム英語」と化す。これで作品のタイトルと物語の中身が完全に合致する。

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