柔道体重別選手権、阿部詩が途中放棄の真相
世界選手権の出場権獲得
阿部は「期待を裏切って申し訳ないけど、体を整えて次は輝けるように頑張りたい」などと誓った。
78キロ級では東京五輪金メダルの濵田尚里(31)=自衛隊体育学校=が、準決勝では立ち技で「技あり」を取られるピンチもあったが得意の寝技で3試合すべてを「押さえ込み一本」で優勝。
48キロ級は五輪で同銀メダルの渡名喜風南(26)=パーク24=も、角田夏実(29)=了徳寺大職員=との長い延長戦を勝ち切って、阿部、濵田らとともに2年後のパリ五輪へのステップとなる世界選手権に駒を進めた。
大きな怪我を「隠し通していた」エピソードといえば、マラソンの高橋尚子選手(2000年のシドニー五輪優勝)を思い出す。
北京五輪を目指した2008年3月の名古屋女子マラソンで惨敗した。その際、前年夏に米国で右ひざの半月板を切除する大手術を行っていたことを告白した。主治医は高橋選手がとても走れる状態ではなかったことを打ち明けていた。早々と不出場を宣言するとスポンサーが離れてしまい、トレーナー、コーチ、医師らから成る「チームQ」のスタッフたちが困ることを恐れたようにも見えた。高橋選手は結局、北京五輪後の2008年10月に引退を発表した。
それにしても、スターアスリートの大怪我をよくここまで隠し通せるものだと感心する。
今年1月ごろに、阿部が腕を吊っている姿を見かけた記者が本人に問いかけたそうだが「大したことじゃないです。大丈夫ですよ」と言われ、さほど気にはしなかったという。本当は十分すぎるほど「大したこと」だった。ある全国紙の柔道担当記者は「こんな大事なことを僕らが今日になって初めて知るなんて。柔道担当記は全員、更迭だなあ」と自嘲気味に語った。「医者の口は堅し」ということか。