おぎやはぎ、設楽統、藤井隆…「元サラリーマン芸人」はなぜ強い? 業界に期待しすぎない“低温”の安心感

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 芸能人に必要なのは、運と実力、そして人を見る目なのかもしれない。連日のようにスキャンダルが暴露される昨今、戦々恐々としている有名人も多いのではなかろうか。

 悪事が表沙汰になるたび、気まずい思いをするのは本人や関係者だけではない。ワイドショーのMCやコメンテーターも相当やりにくそうだ。辛辣に突き放せば視聴者は喜ぶが、業界内では裏切り者のように見られるだろう。その点、冷静に距離を取っているなと思うのが、社会人経験のある芸人たちである。

 筆頭はおぎやはぎの二人だろう。「バイキング」では歯切れの悪いコメントをするタレントたちの中で、飄々と毒を吐いて全体のバランスをうまく取っていた。最近のラジオでも、SNSナンパ報道があった市川海老蔵さんに対し「もともと悪い人だから」とバッサリ。「王様は裸だ」と言わんばかりに、業界人の秘密をあっさりと口にする。

 ワイドショーといえば「ノンストップ!」のバナナマン・設楽統さんも、芸人になる前に鉄道会社職員をしていた。彼も自分の損得というより、その場で求められる対応をそつなくこなす人という印象だ。だからだろうか、MC歴が長いのに彼の言葉がネットニュースになることはほとんどない。本人は「ドS」を公言し、芸人としての切れ味も鋭いが、ご意見番として期待されているわけではないことをわかっているのだろう。

 おぎやはぎにしろ設楽さんにしろ、良くも悪くも芸能人に期待していないスタンスが感じ取れる。どんなに顔が良かろうとお金を稼いでいようと、芸能人だっていい人もいれば悪い人もいるでしょ、という冷めたまなざし。でも、言ってやったぜ、という気負いや自己顕示欲は見られない。そんなの当たり前なのになんで大騒ぎするの、と、大喜びするお茶の間にも水をかけて引き戻すような冷たさを感じるほどだ。

 彼らは就職先でも優秀な社員だったそうだが、芸能界以上に理不尽なルールや人間関係もあったことだろう。一般企業での経験は、自分を客観視する力や背景の違う他人との距離感、理屈の通らない展開への耐性を育んだのではないだろうか。それがコンプライアンス意識と視聴率の間で揺れ動く、ワイドショーというアンバランスな場にうまくハマったように見える。

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