ESGの観点からロシアはもはや投資不可能な国 そこで浮上する意外な投資先とは

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 ロシアのウクライナ侵攻を機に世界経済は大きく変わりつつある。グローバル経済を牽引してきた投資マネーの世界にもその影響が及んでいる。

 21世紀の投資の分野で最も成長したのはESGだ。ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉だ。気候変動問題や人権問題など世界的な課題解決への関心が急速に高まっている状況下で、ESG投資(ESGに配慮した企業に対する投資)の総額は世界の投資額の3分の1を占めるまでに拡大したとされている。

 ESGを配慮しない企業は投資家から敬遠される傾向が強まってきており、ウクライナ危機はこの動きを加速させるとの見方が強まっている。

 ウクライナに侵攻したロシアから外資系企業が撤退する動きが顕著になっている。ロシアからの事業撤退を表明した企業は既に300社を超え、事業を継続している企業に対しても「ウクライナの人権状況を著しく悪化させたロシアで利益を上げ続けることはけしからん」とのESG的な批判が盛り上がっている。

 急拡大したESG投資の中身の精査も進んだことで、ESG投資に占めるロシアのプレゼンスの大きさも問題になっている。

ロシアだけでなく…

 ウクライナ危機直前の時点で複数のESGファンドはロシア国営エネルギー大手、ガスプロムやロスネフチの株式やロシア国債を購入していた。世界のサステナブル・ファンドの14%がロシア資産を保有していたとも言われている。

 人権問題に配慮するはずのESG投資がロシアの独裁政権に資金を提供していたことが露呈したことで、「独裁政治や横暴な政府の存在も考慮しなければならない」とESG投資の指標の見直しが始まっている。

 ロシアはESGの観点で投資不可能な国になってしまった感が強いが、「ロシア資産への投資を完全に遮断すれば有望な投資先が見つからなくなる」との声も聞こえてくる。

 ESG投資家にとってロシア以上に心配なのは中国資産が排除されることだ。

 欧州のESGファンドは中国資産に約1300億ドル投資しており、世界全体の投資額はその数倍に上るが、ロシアと緊密な関係を保っている中国にも米国の制裁が及ぶリスクが生じている。さらに「独裁政権への投資を排除すべき」との論調が高まれば、ESGの観点から中国への投資も一切まかりならないことになってしまう。

 このようにESG投資の受け皿が大幅に制限される一方、新たな投資先も浮上している。

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