「プーチン孤立」報道で浮かぶクレムリンの米スパイ 諜報戦でロシアは完敗の舞台裏

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統合司令部の不在

 ウクライナ軍が首都キーウ郊外の奪還を発表するなど、ロシア軍の包囲が進んでいないことも報道されている。

「ロシア軍は高性能な武器は持っているものの、軍部のコミュニケーションや統制が取れておらず、計画通りに侵攻しているとは言い難い状況です。例えば、ロシア軍は、チェチェン共和国の傭兵を使っていますが、この部隊には別の司令官がおり、ロシア軍を含め、全体を見る司令官がいないのです。近年、統合司令部の重要性が改めて認識されており、例えば日本の自衛隊でも、陸海空それぞれの司令官に加え、全体を束ねる司令官が置かれています。ロシア軍の苦戦からは、軍全体を統制する司令官の不在が浮き彫りになります」(同)

 首都キーウの包囲が阻止されている理由は、他にもある。

「軍事侵略には、燃料や弾薬の補給、兵士の食料などを確保するために、戦闘部隊に帯同する兵站が必要ですが、ロシア軍はそこも非常に弱いです。燃料を積むタンクローリーが無く、侵攻を進める途中で、燃料の補給が出来ていないという話もあります。そのせいで、国境付近からのミサイル攻撃などが中心となり、キーウ周辺から撤退する一方、ロシア国境に近く、攻撃しやすいウクライナ東部で激しい攻撃を強化しています」(同)

ヒューミントの存在

 先月30日、ホワイトハウスのベディングフィールド広報部長は、「プーチン大統領は、ロシア軍がいかに苦戦しているか、制裁によってロシア経済に不具合が生じているか、誤った情報を与えられている。側近たちは本当のことを伝えるのを恐れている」といった見解を示した。同日、イギリスの政府通信本部(GCHQ)のジェレミー・フレミング長官も、同様の認識を表明したのだった。

「アメリカとイギリスが相次いで同じような内容の発表をしたのは、両国が情報を共有しているからでしょう。『ファイブ・アイズ』といって、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国は、UKUSA協定に基づいて機密情報共有の枠組みを持っています。この『ファイブ・アイズ』は1950年代からある枠組みで、70年近くの協力体制の蓄積があり、ウクライナ侵攻に関しても各国が情報の収集、確認を行い情報戦に役立てています。今回のプーチン大統領に関する情報は、アメリカが得たのか、イギリスが得たのか、また双方が事実確認をしあったものなのかは分かりません」(同)

 さらにもう1つ、重要な可能性を示唆しているという。

「今回明らかになったプーチン大統領の近況は、ヒューミントつまり人的情報をもとに得た情報だと推測されることです。側近たちが怖がってプーチンが孤立しているというのは、通信傍受だけで得られる情報では無いでしょう。恐らく米中央情報局(CIA)はクレムリンにスパイを配置することに成功していると見ています」(同)

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