ロシア軍の戦費は「1日3兆円」説 8年前の成功体験がプーチンを狂わせた

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ロシア軍は貧乏!?

 意外に思う人もいるかもしれないが、ソ連の時代とは異なり、ロシア軍は“軽軍備化”を進めている。

 朝日新聞デジタルは2021年4月、「世界の軍事支出、過去最多 コロナ禍でも2兆ドル」の記事で、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計値を紹介している。

 これによると、以下のような順位となる。

◆1位:アメリカ 7780億ドル(約95兆4800億円)
◆2位:中国 2520億ドル(約30兆9200億円)※推定値
◆3位:インド 729億ドル(約8兆9400億円)
◆4位:ロシア 617億ドル(約7兆5700億円)
◆5位:英国 592億ドル(7兆2600億円)

 ロシアは4位とベスト5には入っているが、アメリカや中国と比べると桁が全く違うことが分かる。ロシアの軍事費はアメリカの約7・9%、中国の約24・5%に過ぎないのだ。

「ロシアは核兵器にはそれなりの軍事費を投入していますが、軍隊は自国の経済状況を反映させ、身の丈に合った規模にとどめているのです。冷戦時代、アメリカとソ連が二大軍事強国として対峙していた時代からすると、隔世の感があります」(同・田中氏)

 ウクライナ侵攻におけるロシア軍の基本作戦は、そもそも多額の戦費を必要とするものだという。

戦車1両は数億円

「2014年、ロシアはウクライナ領土だったクリミア半島に侵攻し、クリミア共和国を誕生させることに成功しました。ロシア軍の被害はほぼ皆無という成功体験から、今回も『大軍でキーウ(ロシア語表記でキエフ)を目指せば、ウクライナ軍は総崩れとなる』と楽観的な見通しを持っていたと見ています」(同・田中氏)

 とにかくロシア軍が大軍であることを“演出”するため、国内から戦車や兵士をかき集め、ウクライナに向かわせた。もともと軍事費が潤沢ではないロシア軍にとっては、これだけでも負担は大きかったと考えられる。

「その代わり、短期決戦を目標にすることで戦費を抑えようとしていたと思われます。数日や1週間程度でキーウが陥落すれば、それほどの負担にはならないと考えたに違いありません。ところがロシア軍の目論見は外れ、ウクライナ軍は必死に抵抗してきました」

 ロシア軍の主力戦車である「T-90」は、輸出を強く意識して開発された。購入国の軍事予算に合わせ、“ハイスペック”な高額版から廉価版まで、バリエーションが豊富だ。

 そのため販売価格に関する報道も諸説が入り乱れ、1両で4億4000億円とか、1億7000億円など、様々な額が伝えられている。

 自国で生産している戦車だから、ロシア軍の購入費は輸出価格よりは安いだろう。とはいえ、国費から1両あたり億単位という費用を捻出しているのは間違いない。

 ウクライナ軍の対戦車ミサイルで攻撃されれば、億というコストが投下されている戦車が一瞬にしてなくなってしまう。

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