ロシア軍の戦費は「1日3兆円」説 8年前の成功体験がプーチンを狂わせた

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 読売新聞オンラインは3月30日、「戦費試算『1日最大3兆円』、高価な長距離精密誘導弾使用にプーチン氏激怒か…『支持失う前に金欠に』」との記事を配信した。

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 記事によると、イギリスの研究機関が「ロシアのウクライナ侵攻が長期化するにつれ、戦費がうなぎ登りに上昇している」と発表したというのだ。

《英国の調査研究機関などは今月上旬、ロシアの戦費に関し「最初の4日間は1日あたり70億ドル(約8610億円)だった。5日目以降は200億~250億ドル(約2兆4600億~3兆750億円)に膨らんだ」と試算した》

 この報道に対し、Twitterでは誤訳という声もある。担当記者が言う。

「拡散しているツイートによると、billionの意味を勘違いしたというのです。Billionには『兆』という意味もあるのですが、『10億』を表す場合もあるとの指摘でした。ただ、調査機関の原文を確認すると、単純な『戦費』ではなく、『トータルの経済的損失』を試算した、というのが真相のようです」

 これまでに報道された戦費も見てみよう。例えば2021年、アメリカ軍はアフガニスタンから撤退した。その際、アメリカ政府は20年間で約8370億ドル、約92兆円の戦費が使われたと報告した。

「20年間で92兆円を割ると、1年で4兆6000億円という数字になります」(同・記者)

第二次大戦の戦費

 ただし、21年8月にNHKが報じた「米軍アフガン撤退完了 20年間の米軍死者2461人 2万人以上けが 戦費92兆円」によると、戦費が253兆円という試算もあったという。

《アメリカ・ブラウン大学のワトソン国際問題研究所が国債の利子などを含めて試算したところ、実際にはその3倍近い2兆3000億ドル余り・日本円でおよそ253兆円に上るとしています》

 こちらも20年間で割ってみると、1年間で約12兆6500億円という数字になる。驚くべき金額と言えるだろう。

「過去に戦費の額が報じられたのは、アメリカ軍のものが大半です。今の物価水準に直すと、例えば第二次大戦におけるアメリカの戦費は約452兆円だったとか、ベトナム戦争は約83兆円だった、という報道です」(同・記者)

 中国軍事問題研究家の田中三郎氏に、読売新聞の報道をどう見るか、取材を依頼した。

「ロシア軍の戦費が1日に2兆円という額なのかについては、なんとも言えません。とはいえ、ロシア軍の戦費が急激に上昇しており、国家の屋台骨を揺るがしかねないほどの額になっていることは間違いないと見ています」

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