変死体の搬送費用、神奈川だけ“遺族持ち”の理由 警察と業者の癒着で不正も

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 ある日、身内の一人が行き倒れで亡くなったとしよう。当然、警察署は死因を調べ、遺体を搬送してくれる。大抵の場合、費用はかからない。実際、東京や大阪ではお金を取られることはない。ところが、神奈川県では、そうはいかない。遺族に遺体の搬送費用が請求されるのだ。時に十数万円にのぼることもあるという。

〈変死体 警察への搬送費用 神奈川県警のみ遺族負担〉

 毎日新聞がそう報じたのは3月13日のこと。記事によると、変死体を警察署などに搬送する場合、全国で神奈川県警だけが遺族に負担を強いるケースがあることが分かった。遺体を運ぶのは葬儀会社などで、業者は警察から紹介される。

 葬儀費用の平均は約149万円といわれており、そこに搬送費用が追加されるのだから、結構な負担である。同紙は3月21日にも、遺体搬送用の公用車がありながら県警が十分活用していないと追及しているが、なぜ神奈川県だけなのだろうか。

「病院以外で亡くなることを“異状死”と呼ぶのですが、神奈川県はその遺体の解剖数が全国でトップです。搬送費用の問題は、これと無関係ではありません」

 とは『死体格差』(新潮社刊)の著者でノンフィクション作家の山田敏弘氏だ。

業者との癒着で警部補を逮捕

 異状死は殺人などの疑いがあると「司法解剖」される。一方、事件性はないものの伝染病などの疑いがある場合は「行政解剖」に回される。ただし、監察医制度がある東京区部・大阪市・神戸市以外では遺族の承諾が必要になる。

「そこで2013年に『死因・身元調査法』が施行され、警察署長等の判断だけで解剖に回すことができるようになりました。これを『調査法解剖』と言いますが、神奈川県は他の自治体に比べても調査法解剖やそれ以外の解剖に回すケースが突出して多いのです。搬送代は遺族負担という考えでしょう」(山田氏)

 これが警察と業者の癒着に繋がったらしく、神奈川県警では昨年、遺体搬送の葬儀会社を遺族に紹介した見返りに金を受け取ったとして警部補が逮捕されている。

 毎日の記事について県警捜査1課に聞くと、「お答えする立場にありません」とのこと。

週刊新潮 2022年3月31日号掲載

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