次世代のMC候補… 新婚で話題のニューヨーク「屋敷裕政」はどんな芸人なのか

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かつては「やる気がない」と評されたが…

 このとき彼らが披露したのは、嶋佐が自作のラブソングを歌い、屋敷がその歌詞にツッコむという漫才である。実は「流行りのJ-POPにありがちなダサい歌詞」に対する悪意も含まれているのだが、それを前面に出さず、単なる自作の変な歌を聴かせるネタというふうにも見えるところが画期的だった。悪意を上手く隠す技術を身につけたことで、彼らの面白さがより多くの人に伝わるようになった。

 2020年の「キングオブコント」では準優勝を果たし、その年の「M-1」でも再び決勝に進んだ。コンテストで結果を出したことで、ようやく彼らにスポットが当たり始め、テレビの仕事も増えていった。その結果、彼らがもともとあった実力を発揮できるチャンスが増えた。

 彼らは調子に乗っている人を斜めから見るような皮肉っぽいネタを得意としていたこともあり、人一倍クールで客観的なモノの見方をするところがあった。そんな彼らの飄々とした態度がかつては「やる気がない」と思われて、なかなか仕事が増えていかなかった。

 しかし、くすぶっていた時期が長かったことで、いい意味で開き直ることができるようになった。「最悪や!」の一言が突破口となり、彼らはテレビでも自分たちの生々しい本音を堂々と口にするようになった。

 何もできずに終わるよりは、嫌われてもいいから思ったことをどんどん言っていくようにする。そのような方針転換が功を奏して、ニューヨークは独自のポジションを確立した。

 彼らにはライブで鍛えたMC能力があり、番組の中心に立つ芸人の風格もある。自分たちの話をするだけでなく、他人の話を引き出すのも上手い。特に、屋敷の場の空気を読んで的確なコメントをする力は、同世代の中でもずば抜けている。

 面白い芸人はいくらでもいるが、番組の中心に立つMCを任される芸人はほんの一握りしかいない。ニューヨークはその「ほんの一握り」になる資質を備えた逸材だ。これからますます目が離せない。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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