〈ウクライナ侵攻〉ブロック化が始まる世界のエネルギー市場
購入に課題
天然ガスの脱ロシア依存に苦労している欧州に対し、ロシアは難題を突きつけている。
ロシアのプーチン大統領は23日の政府閣議で、「非友好国(米国やEU、日本や英国、カナダなど)」の天然ガス購入の支払い手段をルーブルに変える決定を下した。
ロシアの国営天然ガス生産企業であるガスプロムの昨年のガス輸出量の約7割は非友好国向けだ。ガスプロムは欧州の取引先と40件以上の長期契約を結んでおり、欧州側は代金としてロシアに1日当たり2~8億ユーロを支払っている。ガス販売の58%はユーロ、39%は米ドル、3%はポンドで決済されている。
ロシアが天然ガス貿易の決済通貨を変更したのは、米国とEUがロシアの中央銀行が保有する外貨準備(ドルとユーロ)を凍結したことが影響している。ロシア産天然ガス購入の決済通貨がルーブルに変更されれば、調達側がルーブルを確保しなければならなくなることから、ウクライナ侵攻後に急落したルーブル相場を下支えする狙いもある。23日の発表以降、ロシアの思惑どおり、ルーブルの対ドルレートは上昇している。
これに対し、主要7カ国(G7)のエネルギー相は28日、ルーブル建て支払いを拒否することで一致したが、ロシア産天然ガスの購入に新たな難題が浮上したことで、欧州の天然ガス価格は再び急騰する事態となっている。
いずれにせよ、世界の供給量に限りがある中で、ロシアへの依存度を強引に下げようとすれば、EUは割高な価格で天然ガスを調達せざるを得なくなる。そうなれば、EU域内のインフレに拍車がかかってしまうことだろう。
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