上戸彩はなぜ「良妻」役がハマるのか ジャニーズとの相性と、包容力を感じさせる「甘え口調」

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 松本潤さんが主演を務める「となりのチカラ」。今まで演じてきたパーフェクトなイケメンから一転、お節介な割に空回りするさえない既婚者役という新境地に挑んでいる。脚本の遊川和彦さんは「家政婦のミタ」「女王の教室」「過保護のカホコ」など、極端なキャラ造形のドラマでヒットを重ねてきた希代のストーリーテラー。松本さんとの化学反応に大きな期待も寄せられていたが、視聴率は苦戦が続いている。

 主人公に共感できない、展開に無理がある、そもそも松本さんに合っていないなどさまざまな批判があるものの、わたしが注目しているのは妻役の上戸彩さんである。なんたる安定感、なんたる変わらなさ。空回りする役に四苦八苦する松本さんとは対照的に、おなじみの「良妻」役には余裕すら感じるのだ。

「半沢直樹」の花役をはじめ、木村拓哉さんの妻を演じた「アイムホーム」など、上戸さんは「ものわかりの良すぎる妻」役が続いている。本作の灯役も、口調はキツいが基本的には夫をサポートする、ものわかりの良い妻である。怒ると英語が口をついて出るなど、ちょっと変なキャラ付けもされているが、それは花役から距離を取るためでもあるだろう。実際に上戸さんは、遊川さんから「花にはならないように」とくぎを刺されていたという。

 けれどもどうにも、上戸さんの怒っている演技は甘えている演技に見えるのだ。すねて実家に帰った時も、平謝りする夫をすんなり受け入れる。彼女の若々しい容姿も相まって、キツい感情的な奥さんというより「ツンデレのかわいい奥さんだな」としか思えない。

 おそらくは彼女のしゃべり方が柔らかいからだろう。すべての語尾に小さい母音が付くような、ちょっと甘えた口調。彼女が口をとがらせて「だあってぇ~」とか「ちょっとぉ~」とか言っている顔を想像してほしい。容易に浮かぶはずだ。「となりのチカラ」では抑えられてはいるが、たらこ唇を突き出して不機嫌さを表す様子は健在。女優として本来なら致命的な弱さともいえるかもしれないが、その怒っても怒っているように見えない甘さが、「国民的良妻」という当たり役をつかんだ強さといえるように思うのである。

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